共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

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zoom RSS 分けられた雇用・福祉の見直しー自治体障害者雇用の役割を考える

<<   作成日時 : 2018/12/13 00:05   >>

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12月9日(日)、NPO法人障害者の職場参加をすすめる会は、臨時総会、共に働く街を創るつどい2018(「つどい」)、共に働く街をめざす自治体提言発表という三つの大事な行事を行った。ここでは、「つどい」を中心にお伝えする。

1.共に働く街づくりー国・自治体の障害者雇用施策の現状とこれから

 「つどい」開会に先立ち、越谷市高橋努市長からのメッセージが、田中障害福祉課副課長により代読された。先般の障害者雇用の問題では障害者をはじめ関係者のみなさんに心配と不安を与え、深くおわびすること、また7月から知的障害者等2名を臨時職員として雇用し民間就労につなげる取り組みを開始したこと、引き続き障害者が生活しやすい環境づくりを推進してゆくと述べられた。
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 「つどい」では、「共に働く街づくりー国・自治体の障害者雇用施策の現状とこれから」というテーマで総合司会を法人運営委員のわらじの会・辻彩子さんが務め、冒頭に現状報告、それを受けてパネルディスカッション、最後にコメントをそれぞれ行った。現状報告は、さいたま市議で車いす使用者の伝田ひろみさん、さいたま市のステップアップオフィスマネージャーで副参事の得丸智弘さん、そして越谷市人事課副課長の小田哲郎さんが行った。
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 伝田さんはご自身が代表を務める障害者の政治参加をすすめる全国ネットワークが国へ抗議と要望を行った後野党合同ヒアリングに同席した報告や、さいたま市が自力通勤・介助者なし勤務の受験制限を撤廃したこと、そして重度訪問介護を就労にも利用できるよう市として国に要望中であることなどを報告した。
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 得丸さんはさいたま市が知的障害者・精神障害者のチャレンジ雇用の独自の場であるステップアップオフィスで、現在14名が働いており、目的として市役所内の雇用促進、民間就労へのステップアップ、そして役所内の「共に働く」環境づくりがあり、副次的産物として職員の超過勤務の削減にもつながっていると報告した。
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 小田さんは市として雇用率の算定で不適切な取扱いがあったことへの反省を述べた後、7月から知的、精神の2名の障害者を臨時採用し、再任用職員が支援をして役所内の各課の依頼業務を行ったり、時にはその課に行って業務を行っていることを報告した。
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2.雇用義務制を超えて、共に働く街づくりーそれぞれの試み

 この後、法人の運営委員でもある県立大学教授の朝日雅也さんをコーディネーターとしてパネルディスカッションを行った。パネリストは、伝田さんと高城徹さん(社福つぐみ共生会非常勤職員)、瀬戸睿さん(医社俊睿会・南埼玉病院院長)、栗田美和子さん((株)クリタエイムデリカ社長)。ところが、栗田さんの乗った新幹線がストップして時間に間に合わないので、急遽専務の栗田慶太郎さんが冒頭のみピンチヒッターで来ていただいた。
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 栗田専務は、現在知的障害者5名を採用しており、将来は10名をめざしたいと述べた後に、障害者雇用は特別なことでなく人間としての営みの問題で、会社も社会の一部であり、社会のためにあるからそこに存在できるという原点を述べて、帰られた。
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 その後、新幹線がようやく動いて駆けつけていただいた社長が休憩を挟んでの第2部から参加されるというドラマチックな展開となった。

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 その社長は、そもそも無理やり何人雇えということよりも、一人一人に合わせて、本人が働いて楽しいと思える仕事をどう切り出すかということに、国全体としてチャレンジすべきで、10人働いているところもあれば、1人しか働けないところがあってもいいのでは、と雇用促進制度のありかたも含めて提起された。

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 高城さんは30代後半まで公務員だったが、上司とのストレスで躁うつ病を発症し、精神の手帳を取って退職。数年のブランクの後障害者枠で物流倉庫、訪問入浴の事務、ヘルパーの仕事を経て、現在べしみの職員として働いている。役所にいた経験では、どうしても波風を立てないように行動しやすいが、障害のある本人を訪問し、しっかり見てもらいたいと思うと述べた。

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 根底には日本社会の差別があり、無理やり平等にしていることに問題がある、企業の障害者雇用のほとんどは最賃に近く、週40時間、介助者なしとの条件で、精神は書類選考で落ちるし、職場の理解もなく孤独になってゆく、と高城さんはふりかえる。
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 瀬戸さんは、かってベトナムで闘っている人々に連帯して闘い、独房で10ヶ月過ごしたことが自分の誇りになっており、今回の入管法改正で、現在もある外国人の過酷な低賃金労働が拡大してゆくことに対し、共闘できたらという思いがあるという。
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 障害者雇用も低賃金で、福祉の場はさらに低い状況に腹が立ってしまう。患者さんにもまずは平気でうそをついて、一般枠で仕事を探したらどうかと勧めたりもする。人によっては30年病気を隠したまま働いている人もいて、病気がわかっても実績を買われているからそのまま働いてくれと言われるケースもあると話していた。当事者・家族が団結して活動するこうした会は大事で、もっと発展するようにわれわれも努力したいと述べられた。
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 伝田さんは、省庁やさいたま市が自力通勤・介助者なし条項をはずしたが、実際に重度障害者が働ける制度はできておらず、介助の制度を労働に合わせて作り変えるべきだし、医学モデルに基づく手帳制度も社会モデルの考え方により見直す必要があると述べた。また、明石市の例だと思うが、聴覚障害の職員のために手話通訳の職員を雇い入れ、通訳をしない時は事務補助として働いてもらっていると聞いた、そのように個々で工夫を重ねてゆくことも大事だと語る。

筆者が30何年か前に出会った例では、入間市役所の職員で筋ジスの車いす使用者が障害が重度化し、かろうじて指の先で和文タイプをポツリ、ポツリと打つのだが、和文タイプも車いすも場所を取るので、市役所のエントランスホールで一人でやっていたが、その準備やトイレ等は障害福祉課の職員が適宜来て行っていた。全国を調べれば、これまでもさまざまな例があるのではないだろうか。

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 第2部の途中では、黄川田衆院議員が紹介を受けて立ち、役所の水増しは大変な問題で、紙の上でのつじつま合わせが多くあったと認識できた、政治家も皆さんとこのように会って実感して進めていくことが少なく理解が進んでいない、こういうことをやめてどんどん入れていけばいいと言ってもミスマッチではお互いが不幸、丁寧にやっていけなければ、また民間の場合はペナルティのようなお金を出すことがあるが、役所の場合はたとえば障害者が作ったパンやクッキーを買い入れるといったことなど、いろんな方法をしっかり考えてこのような大変な失態、信用がなくなるようなことをしないように考えていきたいので、また現場の声をお聞かせいただきたいと述べるシーンもあった。

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 会場から立命館大学で障害学を研究する増田洋介さんが指定発言を行い、雇用する側が社会の一員として採用するとか、ワークシェアリングとか、発想を拡げることで機会が増えるのではないか、一方それが低賃金労働につながることの危険も含めて考える必要があること、また働くことが就労能力、身辺自立に限定されている現状を変えるために労働部門と福祉部門の連携が必要だと述べた。
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 これらを受けてコメンテーターの得丸さんからは、栗田社長が語られた観点で人それぞれに応じた仕事の切り出しをしており、結果としてその後一般就労した8人もそれぞれの現場で継続して働き続けているとの発言があった。
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 もう一人の越谷市障害福祉課副課長・田中克尚さんからは、栗田専務の、みんなで幸せになるという言葉に感銘を受けた、また業務上あまり現場に行けてないがこれからはやっていきたいというコメントをいただいた。
 
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 これらを受けて、コーディネーターの朝日さんからは、今回の件は拙速な数合わせでなく、本質的に障害者就労を考えてゆくチャンスととらえるべきで、公務部門が障害者雇用を行う際の役割は民間に範を垂れる先駆性を示すことであり、それは今回の事態をふまえれば公務部門だけでは行えないことが明らかだ。この機会にいろいろな知恵を団体から引き出し、問題を解決してゆくことが大切だと述べられた。
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 最後に総合司会の辻さんから、越谷市は市役所等の公的機関と民間の職場で福祉施設等の利用者が職員等の支援を受けて実習を行う「障害者地域適応支援事業」を10数年続けており、それを洗い直すことからもヒントがいろいろみつかるのではないかとの発言があり、「つどい」を終了した。
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 「つどい」に引き続き、法人としてまとめた「2018年度共に働く街をめざす自治体提言」が、世一緒の障害者スタッフや就労移行支援利用者等により1項目ずつ読み上げられ、すべての行事を終えた。

3.公務部門の障害者雇用とはなにかをクローズアップ

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今回の「つどい」が課題としたことは、休憩が終わって2部を始めるにあたって、朝日さんが「私は教育研究者として障害者雇用をテーマとしてきたが」と前置きして語ったことに示されている。朝日さんは「企業、支援者、本人それぞれに雇用を進めようと提起してきたが、公務部門については数字が達成されているとの認識を前提にして、それがどういう役割をもつのかについて十分考えてこなかった。そこが反省点としてある。」と語った。ここがポイントだ。
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 今年7月に厚労省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告が発表された。この報告の中でも、これまでの雇用率や企業からの納付金を柱とした制度の問題点や改革の模索が述べられており、今回の「つどい」の資料集に一部紹介した。

 今日のパネリストのほぼ全員が、現行の雇用促進制度の枠組みを超えたところでの共に働く職場づくりや就労のノウハウを語り、そのための雇用・福祉双方の制度の見直しや国・自治体の支援策にふれていた。今回の「つどい」は、地域の障害者、関係者、企業の側からのもうひとつの「在り方研究会」ということができる。
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 このもうひとつの「在り方研究会」をパワーアップするための役割を担えるのが、それぞれの地域に密着した自治体だ。自治体が自らの職場において、先駆的な試行的雇用を行い、その経過と成果を地域で共有しながら、地域の人々の参画により働きづらい人々を受け止め、誰もが共に働ける地域づくりの支援策を試行的に実施してゆくことが重要だ。栗田専務の言葉通り、人間としての営みを担う職場、地域をめざして一歩を進めよう。

 さいたま市は既に自治体から国への発信を始めていることが伝えられたが、他地域でもぜひこ国の「在り方研究会」にお任せではない、地域に根差した「在り方研究会」を自治体に呼びかけ、たちあげていきたい。

 
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 休憩時間のひとこま。さいたま市の得丸副参事と「つどい」の前に開かれた臨時総会議長を務めたNPO法人共に生きる街づくりセンターかがし座の吉田久美子理事長が、なんと数十年ぶりの再会。かってご近所同士であり、親しく付き合っていたという。これから厳しい冬に向かう季節の片隅に小さな希望の芽を実感した。

 

 

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