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zoom RSS 埼玉の地域から東北の地域をおもう ―市民福祉講座「いわてとわらじとわたしの暮らし」に寄せて

<<   作成日時 : 2011/07/30 19:02   >>

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就労支援センターのほうも忙しいのと8月に予定されている埼玉障害者市民ネットワーク(野島久美子代表)の総合県交渉に向けて要望書案を検討したりと、やはり、このブログを更新するひまがない。でも、せめてイベント告知だけはしておかないと。…ということで、わらじの会市民福祉講座2011第3回「いわてとわらじとわたしの暮らし」(8月7日(日)13:00〜 ゆっく武里2F 資料代300円)のご案内を(以下冒頭チラシより)。

 東日本大震災 被災地支援報告会 (20011年度 市民福祉講座)
 いわてとわらじとわたしの暮らし

 8月7日(日)13:00〜
 春日部市健康福祉センター・ゆっく武里2F
 資料代 300円

 被災地の障害者支援を通して見えてきた施設主導型の東北の障害者福祉の形。
 是非ではなく、そこからあらためて私たちの地域での暮らしをもう一度考えていきます。
 皆さんもぜひご参加ください。


 1,2部 岩手の被災地支援を通して (報告)
 3部  いわてとわらじとわたしの暮らしを考える(ディスカッション)
    ゲスト AJU 山口まどかさん
    進行  猪瀬浩平さん(明治学院大学教員)


 ここまでが告知で、以下は筆者・山下のコメントである。ささいなことのようだが、上記の告知に書かれている「施設主導型の東北の障害者福祉の形」という表現に、ちょっとひっかかった。おそらく、ここのところ東北とくに岩手へ交代で出かけているわらじの会のメンバーの実感から出た言葉なのだと思う。筆者は被災地へ出かけていないので、そうした裏付けのある言葉に疑いをさしはさむのは少し気がひける。だが、なんでも疑ってかかる性分は直らないからしかたがない。

 そもそも「施設主導型の福祉」ってなんだろう?筆者には、通所施設も施設だし、地域で一人暮らししていてもサービス事業者に囲まれた「見えない施設」という状況も進んでいるんじゃないかという思いもある。だが、ここではまず障害者自立支援法の発想に従って、入所施設や精神科病院への長期入院をさすものとして、東北の実態がどうなっているのかを検証してみる。

 と、えらそうなことを述べたが、とりあえず厚労省のデータを参照する。2005年の数字で、やや古い。ほかによい資料があれば教えていただきたい。

都道府県総人口に占める入所施設利用者数の割合(厚労省調べ)
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都道府県総人口に占める居宅系サービス利用者数の割合(ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイ、グループホーム、通所施設)(厚労省調べ)
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都道府県総人口に占めるホームヘルプサービス利用者数の割合(厚労省調べ)
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都道府県人口10万人当たりの精神病床への1日在院患者数(厚労省調べ)
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都道府県別精神科病院への平均在院日数
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 人口に対する施設入所者の割合は、秋田県が全国一多く、青森県が全国8番目だが、岩手、宮城、福島の被災中心3県を見ると、岩手が10何番目かで、福島は全国平均くらいであり、宮城は少ないほうから9番目になっている。ちなみに最も少ないのは神奈川県で、埼玉県は少ないほうから5番目である。

 人口に対する居宅系サービス利用者の割合を見ると、岩手県は全国で8番目に多く、宮城県は全国平均よりやや少なく、最も少ない県は埼玉県で、福島県は少ないほうから8番目である。

 人口に対するホームヘルプサービスの利用者の割合を見ると、埼玉県が少ないほうから10番目で、岩手県はほぼ埼玉と同じ。宮城県、福島県はそれよりやや多いが全国平均を下回っているという状況だ。ダントツに多いのは大阪府で、最も少ないのは秋田県である。

人口10万人当たりの精神病床への1日在院患者数および平均在院日数は、2007年の調査。1日平均在院患者数については、宮城が全国平均を下回り、岩手、福島はやや上回る。平均在院日数については、3県とも全国平均をやや上回る。1日平均患者数も平均在院日数も、中四国・九州に偏って多くなっている。

 少し前のデータであるとはいえ、岩手、宮城、福島の3県が「施設主導型」といいきれる実態はないのではないかと思われる。秋田県ならばその表現があたっていそうだが。

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 ただし、筆者が冒頭で述べた、「通所施設も施設だし、地域で一人暮らししていてもサービス事業者に囲まれた『見えない施設』という状況も進んでいるんじゃないか」という意味で「施設主導型」と呼ぶのであれば、そうかもしれないと思う。

 そもそも全国から東北の被災地へ入った人々が、避難所に障害者の姿がほとんど見えず、地域で暮らしている情報もほとんど伝わってこない、そして在宅の障害者たちも含めて入所施設にみな避難していたという現実を目の当たりにして、「施設主導型」という表現も出てきたのだろう。

 1995年の阪神大震災では、避難所の段差やトイレ等が障害者を排除していることが問題化した。地域で生きる活動を続けてきた障害者団体が公園に独自の避難所を建設したり、地域に根差した介助システムを生かして自宅で孤立した高齢者の移送を支援したり、めざましい働きをした。その中から、ゆめ風基金も生まれた。

 ただ、1995年といえば、わらじの会では恩間新田の農家の奥の闇が醸成した「地域で共に!」のエネルギーが臨界直前となり、筆者ら新住民がからんで、ついに法内施設・くらしセンターべしみと二つ目の生活ホーム・もんてん、そして地域デイケア施設・パタパタが建設され、本格的に地域に打って出ようと騒然とした日々を送っていた時だった。まだまだ地域生活のための施策など、ほとんどなかった時代である。だからこそ、なにもない中で創りだしてゆく、切り拓いてゆくという実感があった。そうした時代だったからこそ、阪神大震災での被災地障害者センター等の動きが状況を鋭く切り裂いたともいえるのではないか。

 ひるがえって、2011年の現実は、1995年当時とはくらべものにならないほど、地域生活のための施策が整備されてきている。国自らが「入所施設からの地域移行・入所施設定員数の削減」や「福祉施設から一般就労への移行」をうたっている。ただ、それらの施策は公の措置としてではなく、民である福祉サービス事業所のサービスを売買するという契約の論理で進められている。基本的には市場競争を通した効率化がめざされることになる。その結果は、障害の種別・程度に加え、能力や適性、さらに家族の支援可能性など、さまざまな要素により、サービスを通して人をより細かく分けてゆくことにつながる。

 とりわけ2006年の障害者自立支援法によって、地域に根差した小さな活動拠点や共に働く店、小さな共同住居等が成り立ちにくくなった。また、地域での出会い、つきあいをベースにした介助関係も、維持しにくくなった。それらすべてを、一定規模以上のサービス事業所とその職員と利用者という形式に変えなければ、制度が利用できなくなったのだ。さらに、経営を考えると、できるだけ多くのサービスメニューをそろえて、ふりわけられてゆく障害者を利用者としてつなぎとめることも必要になる。こうして、ここ5年間は、障害者福祉バブルともいえる状況が、全国どこでも生じているといえよう。

 その結果として、「地域の施設化」という状況が生まれているのだ。

 そう考えると、避難所に障害者の姿が見えず、在宅で通所施設を利用していた人も含めて、入所施設に避難しているという状況は、なにも東北だからではなく、埼玉が被災したとしたら似たような状況になると考えるべきなのではないか。

 東京は全国から一人暮らしをしたい障害者が集まってきているが、障害者自立支援法以後、障害者と介助者が互いを育て合うというつきあいの面が薄れ、サービス、ビジネスという面が前面に出てきて、とくに障害者が簡単に介助者(ヘルパー)を代えてくれと事業所に求めるケースが増えているという話をよく聞く。そんな状況のところに大災害が襲った時、なにはさておいても孤立した障害者のもとへ介助者がかけつけるといった、阪神大震災当時のような雰囲気が生まれるだろうか?否定的にならざるを得ない。けっきょく東京だって、東北と同じかもしれない。

 最後にもうひとつ…東北の被災地3県と埼玉県は、先に紹介した2005年〜2007年の福祉サービス利用状況を見ると、ほぼ同じ程度に「福祉後進県」といえる。居宅系サービスが近年急速に広がりはしたが、まだサービスを受けずにぎりぎりの家族の支え合いで生きている人びとも多数いると思われる。マスコミなどでは、よく「ぎりぎりの支え合いが震災で崩壊して悲惨な状況に見舞われた」という事例が報道される。そして、「もっと早くに支援の手が差し伸べられていたら」と語られる。

 だが、わらじの会の創設時の人々…恩間新田の人々や橋本克己画伯やその他もろもろの面々…は、みなぎりぎりの支え合いの中で、ユニークな生活の知恵や自助具や近隣の支援をひねり出して生き延びてきた。彼らなしにわらじの会はありえないし、その後のメンバーたちもそれぞれに「ぎりぎり」の中から生活や仕事や活動のスタイルをつくり出してきた。

 だから安易に「もっと早く支援の手が」などと、おためごかしを言わないでほしい。ある意味、そこにこそ、状況を変革する素材がはらまれているのだから。
 


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