共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

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zoom RSS シンポジウム「くらしとしごと…いろんなひとがいるまちを」

<<   作成日時 : 2011/06/14 23:20   >>

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写真は、2010年度の越谷市障害者地域適応支援事業の一こま。市内の施設に通所する重度重複障害のFさんが、施設職員の支援を得ながらシュレッダーをかける職場実習をしている。Fさんは手足が動かず、しゃべれない。支援パートナーになった施設職員さんは、悩んだ。そして、考えた。シュレッダーにかける紙を洗濯バサミではさみ、そのからひもをFさんの手につないだ。シュレッダーに紙が巻き込まれるのに応じて、Fさんの手につながれたひもがぴんと張り詰める。仕事が遂行されていることの証明だ。紙がひっかかって機械がストップしたりすると、ひもはぴんと張らない…。

 チャップリンが「モダンタイムス」で、機械の歯車の中に巻き込まれる、そのことに通じる体験を、Fさんはした。働くということの一断面を、チャップリンは鋭く切り取った。あれは自動車産業が勃興したころ、人間が機械の部品となるような「科学的管理法」(テーラーシステム)が打ち出された時代だった。

 Fさんの職場実習は、たくまずしてその裏をかいたようである。Fさんがそこにいたこと、支援の職員と職場の人々がそこに居合わせなければありえなかったアートといってもよいだろう。

 もうひとつ、Fさんの写真を見ていて思い出したのは、かって青い芝の故・横塚晃一さんが、「重度障害者にとって労働とは」と書いたこと。介助者の苦労を少し減らしてやろうとして、介助を受けている重度障害者が心持ち腰を浮かす。それが重度障害者にとっての労働であり、社会的役割を担うということなのだと。

 横塚さん自身、かって養鶏業をやっていた。当時、横塚さんのように歩ける脳性まひ者たちの中には、町工場等で働いている者も多かった。年金はお茶菓子代程度しかなく、働かなければ生きられなかった。そして、過酷な労働で、脳性まひ者たちは体を壊し、若くして亡くなる者も少なくなかった。

 そうした状況の中で、横塚さんたちは、働かざる者食うべからずというのは健全者の論理であり、その論理にからめとられて殺されてゆく自分たちの位置を見据え、健全者社会に投げ返さなくてはいけないと考えた。すなわち、働くことはいいことだという考えは健全者幻想に発しており、自分たちのなすべきことは働くことではなく、生きざまをさらすことだとした。それでもなおかつ働くこと、労働を、社会的役割を担うという意味でとらえれば…ということで、介助者との関係にからめて語ったのだと思う。

 いま、時代状況は異なるが、大多数が契約社員として雇用されている比較的若い知的障害者たちを見ていると、職場では彼らに特化された仕事に固定し、他の社員とアフタファイブに飲みに行くといったこともあまりなく、まっすぐ帰宅し、休日も特別支援学校時代の仲間だけのスポーツサークルに参加するくらいで、給料は親が管理しそこからお小遣いをもらっているというのが一般的である。労働はもっとも重要な社会参加であると言われながら、福祉施設に通っているのと異なるところのない現実があるように感じる。

 まさに障害の種別・程度に応じて、それぞれ周りの地域社会にできるだけ「生きざまをさらす」ことがないよう、分けられているのではないか。逆にいえば、みんなが互いに分けられているから、自分たちの置かれた状況がわからず、ばくぜんと共生社会が進んでいるかのように幻想してしまう。

 このように述べてくると、大上段に差別を糾弾しているように思われるかもしれないが、言いたいことは、境界を越えて互いに出会うことからしか、なにも見えてこないよということだ。そのひとつとして、この越谷市障害者地域適応支援事業があり、その中でたとえばFさんのような事例もあったんだよということ。

 かって障害者雇用を促進しようとしたときのもともとの目的は、タテマエ的にいえば、就労困難な障害者の職業的自立ということと、当時の労働力不足を補い高度成長をさらに進めることで地域社会の成員のみんなが幸せに暮らせるようにというところにあったはずである。

 その目的が達成されたかといえば、重度障害者を二人とカウントする方式や短時間労働もカウントする方式の導入により雇用率は多少上がったかもしれないが、ほんとうに就労困難な障害者はむしろ昔よりも福祉施設のほうへ流れて行っている。
 また、もともと雇用率の対象外である従業員56人未満の町工場など、脳性まひ者や知的障害者をもっとも受け入れてきた零細企業が経営が厳しくなり、障害者を含む多くの人々の身近な職場が減っていっている。地域社会の成員みんなが幸せに暮らせる社会の基盤自体が弱体化しているのだ。

 越谷市障害者地域適応支援事業は、障害者雇用を直接めざすものではないが、障害者雇用を促進しようとしたときの目的を、出発点に戻って考えるきっかけをはらんでいるといえよう。

この事業は過去10年の歴史をもつ。福祉施設や院内デイケアの利用者や在宅の障害者が、職員等の支援を得て、市役所をはじめとする公共機関や民間の事業所で職場実習・職場体験を行ってきた。中には就労準備として参加する人から、地域に参加するきっかけとして実習する人まで、幅広い。それぞれに目標を設定し、職場担当者はそれを受けて、実習内容や時間の調整を行ったりする。職場の側としても、さまざまな障害のある人々と、身近に出会う得難い機会といえる。
  Fさんの職場実習の中にも、施設が、家族が、職場が、これからを考えるさまざまなヒント、テーマが含まれている。
 ……といったことも含めて、今週末に予定しているイベントの告知を忘れていたので、今日アップする。

 下記のシンポジウムでは、障害者が働くことだけでなく、高齢者や生活困窮者、ひきこもりの若者の取り組みともつきあわせて考える。

NPO法人障害者の職場参加をすすめる会 総会・記念シンポジウム

「くらしとしごと…いろんなひとがいるまちを」

2011年6月19日(日)越谷市北部市民会館3階大袋駅下車10分

総会:13:00〜13:45(これも面白いのでどうぞ!)

記念シンポジウム:14:00〜16:30(13:30より受付)資料代:500円 手話通訳・要約筆記有


福祉・医療の場から職場・地域へ   越谷市障害者就労支援センター 小室多恵子さん

地域適応支援事業参加施設から   ぶろっぷはあとあすなろ   米澤えり子さん

CHANGE NOW!     越谷市シルバー人材センター     本多シゲ子さん 

生活保護受給者支援       NPO法人ワーカーズコープ    牛草 賢二さん

ひきこもり当事者の職場体験   NPO法人越谷らるご       鎌倉 賢哉さん

【コーディネーター】埼玉県立大学保健医療福祉学部教授    朝日雅也さん

〈コメンテーター〉 越谷市障害福祉課課長          高橋成人さん


 東北・北関東を襲った地震・津波そして原発事故という大災害の中で、終わりなき経済成長をめざしてきたこれまでの社会のありかたが、さまざまな面から問い直されています。特に被災地の人々が、厳しい避難生活の中でもつながりを保ちつつ生き抜こうとしている姿は、感動をもって伝えられています。

私たちの地域でも、あらためて人と人の出会いとつながりに基づく街づくりが問われているのではないでしょうか。このシンポジウムでは、そのための重要な課題として、いろいろな働きづらさを抱えた人々を地域で受け入れ、共に働くための試みや仕組みについて考えます。

働きづらさを抱えているのは、障害のある人々だけではありません。高齢者、生活保護受給者、ひきこもり当事者も、それぞれに就労しづらい条件を背負っています。さらに、子育て中の人や親を介護している人、病気がちの人、さらには長年従事してきた産業が社会の流れの中で衰えてしまった人など、実は地域のかなり多くの人がめいめいに働きづらさを抱えています。

越谷市ではもう10年にわたり「障害者地域適応支援事業」を実施してきました。この事業は、福祉施設、精神科デイケアの利用者や在宅の障害者が、職員等の支援を受けながら、市役所や民間事業所で職場実習を行う、全国的にもユニークな取り組みです。6年前からは越谷市障害者就労支援センターが、この事業を通して、雇用のための準備支援はもとより、雇用の枠を超えた多様な就労や社会参加の支援のための地域ネットワークづくりに取り組んできました。

それぞれに異なる働きづらさと支援の現状を紹介しあいながら、すべての住民がつながりあって生きるまちの展望を、みんなで考えてゆきたいと思います。 


特定非営利活動法人 障害者の職場参加をすすめる会 (代表理事鈴木操)
連絡先・越谷市東越谷1-1-7須賀ビル職場参加ビューロー世一緒内048-964-1819(Fax共)

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