共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

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zoom RSS 死にかた・生きざま 「地域と障害―しがらみを編みなおす」(わらじの会編著・現代書館) 出版 

<<   作成日時 : 2010/03/28 14:33   >>

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 わらじの会編著「地域と障害―しがらみを編みなおす」が、現代書館から刊行されました(四六判並製 404ページ・税込み3150円)。
 この本の中で、執筆者の一人・水谷淳子は、こう書いています(死生の橋の憩い)。「わらじの会でさまざまな人とつきあっていると、生老病死は日常茶飯事である。」
 下の写真は、この本の中のほとんどの章に登場する、故・新坂幸子。亡くなる数ヶ月前の写真です。左は、越谷市のふれあいの日のイベントで。右は、このブログの編集の場である黄色い部屋に埼玉障害者市民ネットワーク事務局の電話番に来たところ。
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 「幸子さんは乳がんになり、その後1年2ヶ月の間、私たちや社協のヘルパーさんの介助や訪問看護師の看護を受けながら、自らが大家でもある生活ホームで過ごし、そして亡くなった。2000年のことである。この年は、わらじの会関係ではほかに7人が亡くなった。」(水谷・前出)

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 上の写真は、生活ホーム・オエヴィスに訪問看護師が来たところ。

 医師である水谷と共に「メディカル・シスターズ」と呼ばれた看護師・保健師の平野栄子(黄色い部屋のお隣さん)は、やはりこの本の中で、新坂幸子の最後を次のように描いています(ながーいつきあい)。

 「7月30日(日曜日)朝から『やだよう、やだよう」と繰り返しながら、時折『新井さんよう』と言っているようなので、新井さんに傍に来てもらうと、『あのよう…』と、私たちに傍にいないでと言っているようなので、離れていったが、新井さんには彼女の言っていることが伝わらないようなので、『兄さん呼んで』と言ってるんじゃないのと新井さんに確認してもらうと、彼女は『うん』と頷いたのだった。すぐに本家の兄さんに連絡して来てもらった。」

 注:新井さん:生活ホーム・オエヴィスの入居者の長老的存在。
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(写真は新坂幸子の終の住処・生活ホーム・オエヴィス)

 「彼女は兄さんに本家のほうを向き『家によう、帰してよう』とはっきり言った。びっくりした兄さんはすぐに『待ってろ、すぐに家を片してくるから』り家に戻り、弟さんを伴って小さなライトバンでオエヴィスにやってきた。私たちは何がなんだかわからぬまま彼女の勢いに押されて、ある人は布団を持ち、ずるずると彼女をライトバンに乗せ、何人かは酸素吸入器や消毒キット等を抱え、ライトバンの後ろからぞろぞろとついて行った。とても暑い日で、田んぼの中を車はドアを開けたまま進み、その後から何かしら抱えた私たちが無我夢中で歩き、あっという間に本家に着いてしまった。」(平野・前出)


 注:新坂幸子本人は布団に寝たままで、そこにいた者6人位で、彼女が寝たままの布団を持ち上げて外へ歩いて出て、ライトバンの後部から布団のまま車に運び込んだ。そして、みんなが、車の周りを一緒に歩いて、すぐそばの本家(生活ホームに移るまで幸子がずっと暮らしてきた家)まで移動した。ちょうどその時来合わせた訪問看護師たちも、このかたまりの中に巻き込まれる形で、一緒に本家に行ったというわけだ。

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(写真は生活ホーム・オエヴィスと本家のある恩間新田の薬師堂。当時の写真。)

 「幸子さんは本家の大広間に横に寝かされた。大きな農家の広間はとても涼しく、床に就いた幸子さんはゆっくり部屋を見回し、『ばあちゃん!』と。兄さんが『ばあちゃんは去年死んだからいねえよ』と応えていた。姉さまも訪ねてくれ、彼女は安堵したような様子だった。数時間して、またオエヴィスに帰ることになり、来た時と同じような状況でオエヴィスに戻った。
 彼女の容態は、夕方からさらに悪くなり、意識も戻らず、血圧が徐々に低下し、7月31日の早朝、多くの人たちに見守られて永眠した。」(平野・前出)


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 (この写真も当時の恩間新田。幸子の住む生活ホーム・オエヴィスの入居者仲間の故・橋爪静佳(左)とケアシステムわら細工で彼女達の介助のコーディネート等を担っていた故・糸賀美賀子)

 わらじの会、30余年。この本の後ろに付けた年表を見ると、80年代までに8人が亡くなり、90年代に23人、21世紀に入って26人の関係者が亡くなっています。新坂幸子だけでなく、多くの人たちの死に至る生の日々を、さまざまな人たちが共有して来ました。

 やはりこの本の執筆者である今井和美(通称・あんこのほうが通りがいい)は、次のように書いています。

  「『あたりまえに』というのは、『正しい』とか『平凡』ということではない。『いろんなことがいいも悪いもあってあたりまえ』ということであり、それを教えてくれたのは、わらじの中で出会ったいろんな人の死に方(生き様)であり、そこに付き合い立ち会う人たちだった。そして、なんのことはない、私の家族の中にもあった。」(あたりまえに生きる)

 その死に方、生き様は、個としての彼、彼女の行為と言い切ってしまうことはできません。さまざまな人々の異なる相互行為の積分されたものというべきでしょう。だから人がいる限り、時代を通して、バトンタッチされてゆくはずです。そして、死者たちは、天国や浄土ばかりでなく、草葉の陰にもいて、私たちをみつめているのでしょう。

 私たちは、単に伝説とか教訓としてではなく、いま共有している関係の構造を考えるために、この本を作りました。
残念ながら、初版は2000部限りですので、すべての書店に回るべくもありませんが、大きな書店やオンラインショップで、ぜひお求め下さい。(写真は県内のある書店で)


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 「地域と障害 ―しがらみを編みなおす」 わらじの会(編) 現代書館  四六判並製 404頁   定価 3000円+税


なお、この本をお読みになった方で、月刊わらじを読みたくなった方は、下記にメールでその旨を書き、送り先をお教えいただければ、お試し本をお送りします。
    連絡先:e-mail : waraji@muf.biglobe.ne.jp 月刊わらじ編集部







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「地域と障害―しがらみを編みなおす」25日出版!買って下さいね
この写真は、2000年2月、バリアフリーとは程遠いレトロな会場(キッコーマンを創業した茂木氏の屋敷だった野田市民会館。もちろん純和式。)で開かれた「月刊わらじをくっちゃべる会」。当時、会の20周年記念誌づくりを話し合いました。  それから折にふれ、ああでもない、こうでもないと、くっちゃべってる間に、21世紀に入り、さらに年月が流れ、このたびやっと実現。はや「20周年」ならぬ「30周年」。 ...続きを見る
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2010/08/03 23:12

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