精神科診療所から見る世間―学校編

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昨年11月に、県立大学清透祭の軽喫茶わらじで開催した市民福祉講座第1回・小原基郎さん「診療所から見る世間」の記録。 小原さんは、はじめにこう語られました。「私はやっぱり診療所で患者さんの話を聞いて患者さんの何が今問題になっているかを医者が把握して、それを患者さんに「こういう点で困っているんですね、辛いんですね。」ということを分かるというのが一番大事だと思っています。分からないまま症状だけ回復していっても、患者さんにとっては空しいだろうし、こちらもそれだけのことしかやっていないなと。だから、この患者さんは何で一番困っているんだろうなということをしっかり捕まえておくことが大事だと思いますし。ただ、それは言う程にはきちんとできていないかもしれませんけれども。」
 この日のお話は、学校、会社、若者、高齢者、自殺、福祉と、多岐にわたりました。いっぺんに載せるにはボリュームがありすぎるので、何回かに分けて掲載します。

 今回は学校編。不登校、いじめ、パワハラを中心に話していただきました。
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 不登校が減ったというが 教室に入れない子は増えている

 平成17年の不登校がこれだけいると。中学生は12万人、小学生は2万人、で、4年連続減少したと書いてあります。数としては不登校が減少しているのかもしれません。
 しかし、僕が見るところによると学校に行っているけど教室に入れないという人の割合は増えています。だから学校に行っている人の中にも本当は学校に行ききれてないんですね。いわゆる保健室登校をする子が非常に増えています。
 授業中だとか、いっぱい人がいる中にいられないんですね。ただ、何か理由があるのかとその子に一生懸命聞くんだけど、友達も先生も嫌じゃない、勉強も嫌いじゃない。何が嫌なんだろうねって結局わからないんですよ。自分でもわからない。
 集団ということが嫌なんだろうね。だから、逆に部活なんかは割と入る。それから、塾みたいに割と一対一で対応してくれるところは行ける。ただ、教室だけは入れない。そういう子が非常に増えています。これは一つ、最近の特徴だなと思ってます。

 これは一つには核家族化というのを通り越してパーソナル化だということを言っているんですけれども。核家族どころか一人一人ばらばらですね。食事も一人で食べるとかね。外で食べてきなさいよとか、お母さん携帯にしか書かないから携帯だけで繋がっている。みんな一人ずつ携帯を持って部屋の中でご飯を食べる。
 ですから、一人でいることに慣れちゃってて、集団というのがめんどくさいというか怖いというか、緊張する。そういう背景的なことがあって、教室に入れない。意外と先生とかともいい関係だし、友達関係も悪くないし…でも、教室に入れない。
 で、そういうことでちょっと不登校が減ったということでは喜んではいられないんじゃないかと思います。

いじめも減ったというが いじめを誰が確認するのか

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 それからもう一つはいじめの問題ですね。いじめもこの資料にちょっと書きましたけれども、いじめも2年連続減少したと書いてありますね。しかし、いじめというのはそんなに減っていないんじゃないかと思っています。というのは、いじめというのは、いじめとしてやっているのかどうかを誰が認定するのか、なかなか難しい問題ですよね。
 いじめる側は全然いじめている意識がなくて遊びのつもりでやっている。単にからかっただけだとか。僕は、いじめというのは当人がいじめられたという意識を持ったらいじめだと定義しています。そういう主観的な問題がかなり含まれてますからね。中には、いじめられたといっても妄想的なものもありますけれども、それは少ないかもしれない。いじめの大多数は被害妄想じゃなくて、実際やっぱりからかわれている、ということが多いです。

 ここに、埼玉県でも今年の3月にいじめで自殺したという記事が出ています。これは教育委員会がちゃんと調査をしたにも関わらず、教育委員会はいじめとして確認できなかったと報告しているんですね。この頃北海道でもやっぱり同じようなことがありました。こういう風に学校の中で直接目に見える形でいじめが行われているというよりも、ネットだとか携帯などを通じてやるから、先生からは把握しようがないという面もあるんですけどね。把握できないからといって「ない」という風に断定するのはおかしいんじゃないかと思うんですけど。
 わからないというんだったらいいですけど「ない」と断定されたら、もういじめられている側は逃げ場がないですよね。救いようがない。僕は、いじめられて学校に行けないという子が鬱状態になってきて、相談受けることもありますけれども、とにかくどこも救ってくれない。親ですら、親に言っても半信半疑。親に言って、もしだめだったらどうしようと思って、親にも聞けないとか、そういう子がいましてですね。
 
 どうしても周りが変わりようがなきゃ学校を替えるしかないから、とにかく逃げ出しなさいと言うんだけど、いじめというのはなかなか先生のレベルじゃ把握できないですね。
 先生はやっぱり両方の立場に立とうとするから、どうしても足して2で割るような考え方しかできなくなっちゃう。で、いじめてないと言われれば、じゃあちゃんと仲直りして握手して今度から仲良くしようねって、それで終わっちゃうんですよね。ところが、表ではそんなこと言ってるけど、裏ではまた同じことが繰り返される。
 そういうことで、いじめはなかなかなくならないことだと思いますし、学校の先生の側はいじめについてもうちょっととらえ方を厳しくしてもらわないと困るなというところはあります。

パワハラにさらされる先生たち
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 先生も大変なんですね。ここに資料として第一番目に挙げましたけれども、教職員の病気休職が全国で8000人。埼玉県だけでも平成19年度で413人の休職者のうち精神疾患が142人。つまり、学校の先生が病気で休む6割が精神疾患なんですよね。で、その7割くらいが鬱病。つまり6×7だから42%が鬱病です。全休職者の4割が鬱病なんですね。それほど、教師が窮地に立っているんです。
 これはこの新聞の記事にありますように、非常に負担が増えているんですね。部活だなんだと土日も休みなく、とにかくハードです。ただハードだというだけではなくて、プレッシャーをかなり上から与えられていると聞きますね。あと、僕らも書類が多いですけど、先生は生徒を見る暇がないくらいに書類だらけですね。

 それはともかく、相談ごとを受けた上司が「そんなの持ってくるな。」と。それどころか、逆に困っている、辛いという先生を押さえつけるところもしばしば見受けられます。
 何とかならないか、そういうことを言ったら、ある管理職は全く認めないと。全然考えようともしないで、何を言っているんだという感じで対応したんですね。それで、こういう先生もいるんだなと思った先生が参っちゃって、欝になって病気になってこちらに来たんですけれども、そういう診断書を出して休むことになったんです。
 でも、その管理職が「欝なんて甘いな」とか言って追い討ちをかけてくるんですね。それでますます参っちゃって。かなり支える人が周りにもいたんですけど、その圧倒的な管理職の力に勝てなくて、その先生は辞めちゃいました。

 また、父兄との調整役を務めている先生が、一緒に出ている校長の態度が尊大なので、父兄とうまくいかなくなり、次回からはソフトな教頭先生に出てもらおうという話で落ち着いたらしいんです。で、その先生が校長にそのことを言ったら、校長がお前許さんという感じで怒って、その先生は校長の剣幕にすごいびっくりしてしまって、体が震えて止まらないと。その先生はもう校長の顔を見るだけで体が震えて声も出なくなっちゃった。
 これは一種のPTSDですね。そういう反応をしちゃって、ずっと休まざるを得なくなってしまった。幸いなことに、その校長が翌年の4月に転校になったので、その校長がいなくなっただけですっかり気が強くなっちゃって。そういうことがありましたね。

 やっぱり管理職の権力が今すごく大きくなっていますよね。どこかのわけのわからない代議士が日教組いかんという話をしているけど、僕は逆に日教組が強くなって、管理職の横暴を許さないようにしなきゃだめじゃないか、教職員がもたないなと。そんなことがありました。で、学校に関して言うと、やっぱり子供も先生も大変だなと。30人学級、40人学級というのも大変です。だから学校制度というのを根本的に変えないと先生も崩壊するし、子供たちも集団に馴染めなくなっている。



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