がん猫てん 最後の発信

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2月7日、黄色い部屋で。てんのがんは、急速に大きくなり、皮膚を破り始め、滲み出しが始まっている。ふとんの上にずっといて、あまり動かない。
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2月9日、黄色い部屋の前の使ってないエアコンの室外機の上に抱いていき、ひなたぼっこをさせてみた。しばらくいたが、またふとんに戻ってしまう。テリーヌ状の缶詰を出してみたが食べないで、水を飲むだけ。
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2月19日、相変わらず食べずに水だけ飲んでいるてん。同じ水なら、水道水よりプランクトンのいそうなたまり水の方が、少しは栄養になるかも。そう思って、黄色い部屋の濡れ縁の脇にある水がめの前に連れて行ったら、首を伸ばして飲んだ。このかめの水は、猫専従の相棒の「まえ」が以前から好んで飲んでいるが、てんが口をつけたのは初めて。
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2月22日、てんを抱いて、庭へ出した。元気な頃のてんは、ぼくが花に水をやっているとき、水道の蛇口とホースの継ぎ目から漏れ出す水を飲むのが好きだった。それで、今日も水道をひねって水を出してみた。すると、飲み出すてん。そして、庭を散歩も。いいぞ。昔、家の奥で過ごしてきた連中と一緒に街に出たときみたいだ。今日はいい日だ。
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2月23日、抱いて庭に出してみたら、今度は伸び上がって、かめの水を飲んだ。けっこうやるなあ。
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だんだん末期がん状況になじんできた感のあるてん。長いこと、庭にいた。食べないのは、もしかしたら断食療法なのか。あるいは、断食、断塩を全うし、猫浄土をめざそうというのか。
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2月24日、朝、ぼくがてんの閉じた口にテリーヌ状の缶詰をしつこく塗りつけその後皿を差し出したら、るせーなー、食えばいいんだろうといった感じで、少し自分で食べた。まるでRさんの食事介助のよう。断食療法はわかるけど、ちょっとは食べてほしいんだよ。
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もう抱いてゆかなくても、自ら外へ出て、水道から漏れ出た水を飲むてん。朝のひざしを背にして、じんわりと風景に溶け込んでいる。かって、褥瘡が悪化し、ストレッチャーに寝た状態で、駅前のビラまきや教育局の泊まりこみに出かけて行った故新坂光子さんのことが、思い出される。
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この日は、ついに、危険な道路を横断して、向かい側の畑にまで遠征した。黄色い部屋の猫達の命を奪ってきた交通事故多発地点を、よろよろと渡って行ったが、不安を飲み込んで、離れたところで見守る。Fくんが電動車椅子で街に出始めたころのように。
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3月3日、朝の光の中で、昇天しそうなてん。さすがに、てんは放っておくと寝たままになる。もうこれで1ヶ月基本的に水だけで生きている。生活ホームオエヴィスでお釈迦様のようにみんなの中で入寂した静佳さんから、あたかもバトンタッチしたかのようだ。庭に抱いておろすと、また水道の漏れ水の池に口をつけ、うまそうに飲む。修行の道をひた歩むてんだが、執着を捨てられない俗人のぼくは、老猫向けのレトルトの袋からスープだけを皿に少し入れて、無理やり口につけたら、一口だけ飲んだ。スープに血が混じった。
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耳鼻科の駐車場に抱いて行き、またテリーヌを口に付けると、やけくそのように少し皿から食べる。そのうちよろよろと歩き出す。家と家の間の隙間を遠くまで入ってゆこうとするので、さすがに抱き上げて連れ戻す。でもしばらくして、行方がわからなくなる。「死に場所を求めて…」という言葉が頭をよぎる。しかし、いつのまにか戻ってきた。どうやらいつも行っていたところを、巡回に行ってきたらしい。
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3月6日、暖かい日ざしの中、起きるとすぐに駐車場を横切り、家と家の隙間をどんどん奥へ行き、どんづまりのところでたまり水を飲んでいる様子。ぼくが外の道路を回って近くへ行くと、その脇の家の奥さんらしき人がちょうど外にいた。なんと、てんはその家に時々遊びに来て、家の中まで上がらせてもらっていたという。その家の猫とも、息子さんとも友達だという。てんは、顔の柄がちょび髭があるように見えるので、その家では「とっつあん」と呼んでいたそうだ。てんは社会を生きていたんだ。動きがスローモーtションになったので、その世界が見えた。黄色い部屋だけのてんではなかったんだ。その奥さんとぼくがおしゃべりしているのがうっとうしいのか、てんは家に上がろうとはせずに戻ってしまった。てん、すまん。これまで個体としてのおまえしか見ていなかった。
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3月8日、午後1時、春日部市教委との話し合いを終えて、職場参加をすすめる会の事務所・世一緒(よいしょ)へ向かう途中、黄色い部屋へ立ち寄ったら、てんは死んでいた。12時半までは息をしていたことが確認されているので、その30分の間に息をひきとったとみえる。
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猫達の専用イスにてんを安置。庭の花を添えて。相棒のまえが見守る。よく生きたてん。最後にその世界を示してくれた。「今日は死ぬのにもってこいの日」だったんだね。

(こっぺこと猪瀬浩平氏のブログ「晴耕雨読人類往来記には、3月5日のてんの様子が書かれている→http://blogs.dion.ne.jp/coppe/

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てんを庭の草葉(食べごろのかき菜やら勢いを増したはこべやら)の陰に埋葬する。享年10歳。50年前に買ったこけしを立て、庭の梅の枝を折って供える。埋葬に立ち会っていたのは「まえ」(右・推定16歳)。黄色い部屋の猫達の歴史の生き証人だ。













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