母里啓子さん講演NO.3 30年前コレラ菌駆除に見たインフル騒ぎの根っこ

市民福祉講座・母里さんのお話の中から、またひとつエピソードを。今回のインフル騒ぎと根っこでつながる30年前のコレラ菌騒ぎの経験談。日本の感染症対策が、いかに人間よりも集団・国を最優先しているかを示すお話。
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国が先頭 30年前のコレラ菌駆除騒ぎ
 私、もう30年近く前に横浜で鶴見川という川の消毒をやったんです。川崎と横浜の間を流れている一級河川で、幅100メートル以上あるのかな。東海道線を乗っていくと見えるんですけどご存知ですか。その鶴見川がコレラ菌で汚染されたから川を消毒するということを厚労省、当時の厚生省と予研(旧・国立予防衛生研究所=現・国立感染症研究所)の先生方が言い出して、川の消毒をさせられたんです。当時横浜の衛生研究所にいましたので。

コレラ菌1匹でも船を焼き捨て
 で、そのバカさ加減がすごかったんですが、日本にはコレラが1匹たりともいちゃいけなかった。台湾バナナにコレラ菌がついてたって言うんで、船一艘分海上で焼き捨てたというのが日本ですから。ともかく、コレラ菌が1匹たりともいてはいけないので消毒をすると。100メートル下になるともう0なんですけど、川に塩素剤を流した。パフォーマンスをやったんですね。消毒できたということになっています。その騒ぎは昭和50年代ですから、1970年代後半ですね。日本の検疫法によって、それこそ外国から来るからというので、横浜の港検疫、これは国の機関ですけど、それが海水中のコレラ菌を明治の始めからずっと月に1回調べているんです。で、ある時コレラ菌が見つかったんです。そしたら、その時港に入っていた船の中に患者がいるのではないかと。普通は船は航海中はトイレを開けっ放しで流していっちゃって、港に入るとトイレを閉める。誰もコレラ患者はいない。でもコレラ菌が海水から見つかった。で、それをずっと遡っていったら、初めはコレラ菌というのは海水中の塩濃度では増えられなくて、真水でも増えないんですけど、汽水域で増える。だから見てたんですけど。

マニラの川は常駐だが
 そしたら、そういう話ではなくて、10キロ以上ずっと上流の川崎市にある腎臓の透析センターの透析の廃液の中でコレラ菌が純培養みたいにされて、そこからずーっと河川を全部汚染していたんです。それがわかったということは科学の勝利なんですけど。だから、そこをつぶしてしまえば川は上から流れていきますから、きれいにコレラ菌はなくなっていく。でも、汽水域の鶴見川河口の大黒ふ頭のところのヘドロの中で、ちょうど海水と真水が混ざってくる。そこでその夏増え続けたんですね。それまで消毒するって言うんです。結局マニラの川やなんかではそれが常駐なわけですけれど、日本ではコレラ菌は住み着いてはいけないのでそれを消毒するって言うんです。

どっちを採ってきましょうか?!
 川の消毒だけで終わったと思ったら、潮の満ち干があって干潟になって、栄養分はあるしそこでポコッポコッと。3月から始まったんですけど、6月になって日が燦燦と照って、コレラ菌の増殖にもってこいになって、ポコポコと出るわけです。それを消毒するって言うんですね。当時の予研の所長の福見秀雄先生以下。今でも覚えています。で、塩素で流すと水に流れていっちゃって消毒にならないから、徐放剤のタブレットを撒くと。これを撒くと、塩素ですから撒いたところが白くなる。黒いところ採ってくればいるけど、白いところ採ってくればいないんですけど、どっちを採ってきましょうかって言ったんですけど。笑い話ですよ、本当に。だけど、職員はそれで動かされますからね。それで、一応3週連続で水の中を検査してほとんどなくなったんですけど。

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1トン飲まなきゃ発症しないのに
 コレラ菌というのは10の5乗くらい体にいっぺんに入らなければ胃酸でやられて発症しませんから、この水を1トン飲まなきゃ発症しないと言うんですけど、いるからには消毒しなきゃみたいな。衛生研究所がプラスに出すからいけないみたいなことを言うわけです。でも、いるものはいる、いないものはいないって言うのが研究所の仕事だから、これで発症するとは思えませんけど、発表するかしないかは当局の話であって、という話を何回もしたんですけど。でも、出ている以上消毒するというんです。それで、2週間連続して、いないことになって、一度消毒はやめたんですね。そしたらその次の週に採ってきたらまたポコッといるんですよ。当たり前ですよね。そしたら、時の横浜の衛生局長が、買い込んだ塩素剤が、それこそいっぱいあるわけ、それを全部入れて使っちゃって終わろうって。そういう行政の中でのばかばかしい議論って本当にすごいですよ。それで、やるって言い出したんです。福見先生もやるって。

保健所長から学んだ責任の取り方
 そしたらその時の鶴見保健所の保健所長がえらい方でした。あれだけ大量に流れている時に自分の保健所管内の10人の中で1人もコレラ患者が出ませんでした、これ以上うちの職員一人たりとも動かしませんって啖呵を切りました。それがやっぱりディシジョンメーカーの言う話ですよね。誰が決めるか、決められるのは誰か。だから、今度の予防接種も誰が決めたか。決めたのは誰か。その結果、乗っかったのは誰か。やめられるのは誰か。そういうことをきちんと教えてもらったのが、そのコレラ騒動の時でした。一人も患者が出ない限り保健所としては動きません。国がなんと言おうと責任を持つと。

世の中にはまだすごい人が残ってる
 ところが、今学校の学級閉鎖というのは本当は学校長の権限なんですね。それぞれの学校でいろんな行事があるし、それが閉鎖しなかったから広まったという声が出たところもありましたよね。今学校長は誰も決めないんです。教育委員会が決めるんです。そうすると、2人とか3人で学級閉鎖です。この間ある学校で学校長が内輪で事実を隠して報告を出さないという話を聞きました。やっぱりすごい人は世の中には残ってるんだと思いましたけど。うちの行事優先というか、この3人くらいで学級閉鎖はしない、ちょろまかしてやらずにすんだという学校があったと聞いています。本来は学校長の責任で学級閉鎖、学校閉鎖があるはずなんです。ところが、早い時期に集会をやめなかったから学校中に広まった、それなら教育委員会で決めてくれというような形で、それで2人でクラスターだなんて、報告しろなんて言ったもんだから、もう学校現場はめちゃくちゃにされてます。

感染症の怖さ―病気より怖さを煽れること
 本当に怖がらせればいくらでも煽ることのできる感染症の怖さというのは病気そのものよりずっと怖いと思います。止められるのは誰か。それに乗らない選択をするのは誰か。家族で誰かなったら職場に出てきちゃいけないとか、初めの頃公務員の海外渡航も禁止だったんですよ。その時に本庁から海外に行った人は帰ってきても一週間出てこなくてよろしいって、こんなのがあってよかったねなんて言って笑ってましたけど。感染拡大防止にどうしてそういう話になるんでしょうね。でも、それが効果があったと総括するのか、ばかばかしいことをやったと総括するのか、次の第二波が来た時どういうことになるのかは、この時どう学んだかにもよるんじゃないかと思います。

「インフルエンザが呼んでるよ」
 私、後期高齢者になりました、去年。だから高みの見物じゃないけど、皆さん方がどうなっていくのかなっていうのを、まだ「雀百まで踊り忘れずだから出てきて喋らなきゃだめだ」と言ってくれる人もいますけど、「インフルエンザが呼んでるよ」とか言われますけど。

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