共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

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zoom RSS 障害のある人もない人も いま地域で問われる「働き方改革」とは

<<   作成日時 : 2018/06/05 09:53   >>

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 いくつものイベントが重なり、時間設定も会場探しも難しかったNPO法人障害者の職場参加をすすめる会のの定期総会と記念シンポジウムが終わった。ふだんなら午後から総会をやり、ついでシンポというかたちだが、今回は朝からまずシンポ、そして昼の時間に総会を終え、午後から懇親会という超変則スケジュール。会場も駅から遠いので心配したが、結果的には70名余りが参加し満席。

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 冒頭の講演は共同連代表・堀利和さん。国の「働き方改革」は「働く」側でなく「働かせる」側の改革だとして、次のように解説する。

身近な障害福祉サービスの分野では、この春から「加算主義」が強められた結果、就労移行支援では「就労しにくい人」の受け入れを避け、就労A型では「働きづらい人」を排除する傾向が助長されるだろう。
いっぽう、長年共に働くための拠点として運営されてきた場は就労B型が多いが、内部では競争を廃して利用者も職員も対等・平等に働くための努力・工夫を重ねてきても、その生産品を売るために外部に出たときには過酷な市場競争に対する販売戦略が問われる。内での非競争と外での競争のバランスをどう取って行くのかが課題だ。

共同連は元来、障害者と健常者が共に働く事業所づくりをしてきたが、イタリア、韓国に学び、ホームレス、依存症、主婦、高齢者を含む働きづらい人をまじえた社会的事業所をめざすようになった。非正規で不安定な働き方が蔓延し、過労死や過労自殺が放置された中での「働き方改革」でなく、そこから排除された人々自らがもうひとつの「働き方」の価値を示していく時だ。
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講演を受け、埼玉県立大学・朝日雅也さんのコーディネートによりパネルディスカッション。いくつかの論点のうち「『働き方改革』より『働く場の開拓』を」をめぐるパネリストの発言が、それぞれユニーク。

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上福岡支援センター21の就労B型事業所「くまのベイカーズ」所長・鈴木啓太郎さんは、外資系生保会社の特例子会社との協働について語る。特例子会社が製造するクッキーの包装と昼食づくりを担い、同社の売り上げの10%の委託料を得て、社員13人全員がセンター21メンバー。会社との関係はいいことばかりではないが、集会や見学等の際には休みにしてもらうこともできている。
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 とかく、よい関係に恵まれてよかったねとみなされかねないが、実はさまざまな軋轢をくりかえしながら現在があるのであり、いつだって一寸先は闇なんだと、鈴木さんはあえて語る。その上で、「企業の側も努力して変わってきているのも事実」と付け加える。

センター21は、また市の公共施設で長年営業してきた福祉喫茶を引き受け、就労B型として、立て直しを始めるといった試みもしている。

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就労B型と自立訓練の多機能事業所「Caféにじさんぽ」の通所者Mさんは「Mの働き方」と題するパワポを自分で作成。そこにコメントを加えた職員・柳沼絵美子さんとともにパネリストとして。

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17歳から働き始め、いろいろな仕事を転々としてきたこと、30代前半で入院したことがきっかけで、以前にもましてデイケアが楽しくなり、何事も続くようになったこと、あちこちで世話になった人々のおかげで今の自分があると思っているという。

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柳沼さんは「Caféにじさんぽ」を「障害者の働く場」としてではなく、普通のCaféとして運営しているという。その中でMさんはできる仕事を担い、工夫をし、体調を考えて出勤日を調整したりしながら、一般就労をめざしている。それが「M氏の働き方改革」でありにじさんぽのめざす「働き方改革」だと柳沼さん。
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 就労B型事業所「ひよせ」からは、サビ管の加納毅さん。無農薬野菜の生産を2ケ所で行い、大手スーパーと直売所で販売している。
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「個人のストレングスの発見と活躍の場」を確保するために、農作業だけでなく、それと関連する納品準備、そして内職や施設外就労も行っている。「作業を通して、個々の長所と短所を理解」し「長所に重点を置き、効率化と意欲向上につなげるように」しているという。
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 以上の3ヶ所はいずれも就労B型で「働く場」を運営しているが、高瀬勇さんが所長を務める「就労移行支援事業所『世一緒』」では、有機無農薬の野菜を店頭販売しているものの、徐々に地域の職場を開拓して、週1時間でも働くことを応援してゆく、働く前になんらかの条件をクリヤーしなければならないことはない、「せっかく来たんですから、どんな支援があれば働けるのか、その人の『働きたい』を応援してゆく」と、高瀬さんは述べる。


 コーディネーターからの「そうなるとサービス報酬が少なくなることが予想されるが」という問いかけに、会場から就労移行支援事業所『世一緒』」の同僚・沖山さんが「サビ管がいない等の減算は最低限受けないように努めている」と補足発言あり。

パネルディスカッションの後、コメンテーターの堀さんと越谷市副課長・田中さんから。
まず堀さんからのコメント。
 センター21は企業を含めて利用できるものはなんでも利用してうまくやっているなと感心した。
 ひよせは農業にはさまざまな作業があることに着目し障害者に仕事を合わせているところに共感。
 にじさんぽはいい意味で障害を売り物にせずその人に合う設定をしてゆくことで本人のインセンティブを引き出している。
 就労移行支援事業所「世一緒」はかなり太っ腹でやってるなあと思った、週半日しか来ない人を受け止めると事業所運営としては大変だが、その人を切ってしまったらどこに行くのかという思いで自分たちもやっている、苦労しながら頑張ってほしい。
 各々から今日報告されたことを整理して、ひとつの分析としてまとめられたらと、堀さんは語っていた。
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 次に田中さんからのコメント。
 センター21の鈴木さんからは、売り上げはあっても経営は難しいこと、人との関係性が大事だという話を聞かせてもらった。
 ひよせの加納さんからは、農作業を通して利用者にもたらす効果、喜び、体力、睡眠、生活リズムの効果が得られることを聞かせてもらった。
 にじさんぽからはMさんのあり方、きっかけ、現状や柳沼さんから施設職員としての関わり方を聞かせてもらった。
 高瀬さんからは、立場は違うけれど対等なんだという言葉がすごく響いた。
 就労の制度がいろいろ変わる中、さまざまな働き方というのもあるが、それ以前にみなさんが言われていた、働きたいという意欲をどう支えていくかということが行政の方にも求められていると思う。その辺を考えて業務に取り組んで行ければと思う。どうもありがとうございました。

 最後に会場から、「障害とはどこまでをいうのか」と「外の市場競争と内部の共に働く関係とを、どう統一的に考えられるか」との質問が出された。最初の質問については、コーディネーターから「障害とはここまでと
区切るのでなく、何らかの心身の状態に基づいて働く上での困難な状態に繋がっている場合を幅広く考えている」との回答。二つ目の質問については、鈴木さんから、「たしかに簡単なことではなく、親会社から委託を切ってもいいんだよ」と何度となく言われたりもしながらもう10年続いてきた。企業を利用するなどと簡単に言えるものではなく、一寸先は闇」との答えがあった。
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 すべてのディスカッションを終え、朝日さんより、「余韻タイム」が告知された。なんと、資料集冒頭の「堀利和さんの講演によせて」(この記事の末尾に掲載)の中に引用されている「TRAIN-TRAIN」(THE BLUE HEARTS)の一節をみんなで斉唱。

この冒頭の文章は筆者が書いた。「弱い者たちが夕ぐれ さらに弱い者を叩く」という「TRAIN-TRAIN」のフレーズは、まさに津久井やまゆり園事件を象徴している。かって70年代、「施設」といえば「山奥」というイメージがあったのに対して、いまは都市中心部を含めてあらゆる地域に「ミニ津久井やまゆり園」が存在する。

 被差別部落が階級社会を安定させる重石として必要とされたのは、「上見て暮らすな 下見て暮らせ」という被支配層の意識を支えるためだとされたように、「きめ細かい支援」のためにきめ細かく分け隔てられた人々は、「まだ下がある」と思って自らを支え、「下に落ちたくない」と働けば働くほどさらに貧しくされ、「あいつらがいるから俺達まで足を引っ張られる」と思わされる。「さらに弱い者たち」が生きることをヘイトし、はるか雲の上に見える「強い者たち」には「忖度」する。

 私達が「障害者が働く」にとどまらず、「職場参加」を掲げているのは、きめ細かい個別支援の必要が、結果的にはこうした差別構造をさらに重層化させてゆくことにもつながっているからだ。

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 今日語られたことでいえば、競争社会と対峙する共に働く場をつくることと同時に、競争社会のただなかで差別を空気のように呼吸しながら生きている人々が働くその現場で人と人として対峙する。といっても、難しいことばかりではない。「障害者」だから専門知識がなければ関われないと思い込んで黙っていたパートの主婦たちが、声をかければ重いケースをラインまで運んでこれるとわかり、それまで突っ立ったままでいた障害者に必要なタイミングで声をかけるようになる。

 覚悟も理論もなしに、出会い、一緒に動く。爪先だけでも、1時間だけでも、働くことを通して一緒にいる。そこに「支援」も関わらせる。その積み重ねが差別構造を少しずつほぐしてゆく。

 今日報告してくれたセンター21、にじさんぽ、ひよせは、それぞれ個別支援や働く場づくりを、その外部の地域、人々との関係の中で進められており、共感を抱いた。今後とも協力関係と学び合いを重ねていきたい。
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 なお休憩の後、引き続き同じ会場で開催された定期総会については、続報を待たれたい。


参考:

「生きづらさ」、「働きづらさ」を抱える人々の「働き方改革」とは
                ―堀利和さん(NPO法人共同連代表・元参議院議員)の講演によせて

                                   NPO法人障害者の職場参加をすすめる会

1)津久井やまゆり園事件が問いかけるもの

 堀利和さんはご自身が代表を務める共同連(関東ブロック)から、最近「障害者か健常者か、それが問題だ!〜共生・共働・共学・共飲」と題する著書を出版されています。

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 その第1章「共生」の第1節で堀さんは、「津久井やまゆり園事件」をとりあげています。堀さんの一つの視点は、「被害者たちも、加害者になった植松被告も、社会から『他者化』された存在」だったということです。「『弱者』である重度障害者達と自分もまた『弱者』という立場と認識したことがひきがねになった」。だからこそ徹底的に差別することにより、自分はそこから解放されようと考えたのだと。

 THE BLUE HEARTS が 「TRAIN−TRAIN」で、歌っています。

「栄光に向かって走る あの列車に乗って行こう はだしのままで飛び出して あの列車に乗って行こう
 弱い者たちが夕ぐれ さらに弱い者をたたく その音が響きわたれば ブルースは加速してゆく」


アフリカからアメリカに奴隷貿易によって連れて来られた人々の歌ったゴスペルは、奴隷解放とともに人種差別が始まり、貧しい白人に黒人を叩かせることにより白人社会を安定させるという新たな支配構造に組み込まれる中で、そんな自らを歌うブルースとして展開されてゆきました。

 堀さんは植松被告の衆議院議長あての手紙で、「障害者は不幸を作ることしかできません」と書き、「日本国と世界平和のために」と述べて、「安倍晋三様にご相談頂けることを切に願っております」と締めくくっていることをとりあげ、「いまの日本政府が彼と同じような優生思想的な考えをもっていると確信しているのだろう」としています。「植松被告も時代の子である」と述べています。植松被告は「あの列車に乗って行こう」と走っている私であり、あなたであり、ほかの誰でもあるのだということです。

 堀さんはこうまとめています。「他人事として事件を考えるのではなく、人権を尊重し、差別や格差をなくす、そういう生き方や立場にたち続けることが重要だろうと思います。社会から他者化された被害者と加害者をわれわれの中に取り戻す作業、そのための社会変革が求められるのです。」

2)私たちにとっての{働き方改革」とは

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 第2章「共働」では共同連の柱である「社会的事業所」について述べられています。それは法制化されていない状況の下で労働能力やADLによって分断された雇用制度・福祉制度に依拠し、市場経済の荒波にもまれながらも、利用者(訓練生)対支援員(指導員)という関係性を差別とみなし、それを克服して対等・平等の労働者・同僚としての関係を築いてきた歴史があるとしています。

堀さんは「社会的事業所の『共働』が未来への普遍的な働き方の扉を開く」として、その法制化こそが「働き方改革」の基本だとし、以下のように述べています。

 「私たちがいう働き方改革、すなわちそれは社会的に排除された人・生活困窮者の働き方、定年後の高齢者の働き方、そして長時間労働の過労死を根絶するための働き方、それら三位一体を同時に根本から解決する働き方改革でなければならないだろう。」

 「TRAIN−TRAIN」はどのように歌っているでしょうか。

「ここは天国じゃないんだ かといって地獄でもない いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない」

 社会的に排除された人々が、弱者としてだけでなく、かといって強者への一発逆転をめざすのでもなく、もう少し一緒に生き、一緒に働いてみようと踏み出すことが、「働き方改革」の基本だなとあらためて思います。とはいえ、それは決して現状追認でよいはずはありません。

それに続くフレーズ、

「ロマンチックな星空に あなたを抱きしめていたい 南風に吹かれながら シュールな夢を見ていたい」

 現在に足を置いて共に生きながら、同時に堀さんのいう「三位一体を同時に根本から解決する働き方改革」を試行錯誤しながらめざす活動でもありたいのです。

 堀さんはまた次のように書いています。「年金受給者が取り沙汰されている昨今、雇用だけが働き方ではない。前期高齢者の働き方にも『社会的事業所』を提案してもよいのではなかろうか。私たち共同連の運動と理念は、障害者を越えて広くひろがっていく。」

 さらに第3章「共学」では、「私の結論―障害児・者が街の風景に、教室の風景に溶け込む世界へ。『共に学ぶ』ことによってもたらされる障害のない子の変化と成長は、障害をもつ子にとっての合理的配慮である。」
 また、「ユマニチュードをケアに限定する必要はないであろう。すべてに応用できる。『共に』の哲学と思想はまさにそれである。『その人』ではなく、中心にあるのはその人との『絆』。だから一方的な人間関係の『支援』を死語に。労働現場でも生活の場でも、ましてや特別『支援』学校はもっての外。『支援』を死語に!」

3)共同連・社会的事業所と当会の「職場参加」

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 共同連に参加している団体の多くは、経営への全員参加、分配における平等をめざしつつ共に働く事業所を運営しています。そして、いっぽうでは競争社会において事業を持続する上でのさまざまな折り合いを余儀なくされ、それらの現実を隠すことなく他の人々と共有しながら、法制度を含めて社会を共に変えてゆこうとしています。当会は共同連の、誰もが共に働く社会へ向けての事業所づくりの実践に大いに示唆を受け共感します。

その上で、当会の日常活動としては地域の企業や団体・生産者の仕事の現場へ、重度の障害者を含む就労から排除されたさまざまな人々が入って一緒に働く取り組みに精力を注いでいます。そこは能力によって人が分けられることを前提として成り立っている場ですが、「他者化された存在」が割り込んで軋みが生じることによって、お互いが「わたし」や「あなた」となってせめぎあいが始まる瞬間に、当会はつきあい続けます。

「世界中にさだめられた どんな記念日なんかより あなたが生きている今日は どんなにすばらしいだろう 世界中に建てられてる どんな記念碑なんかより あなたが生きている今日は どんなに意味があるだろう」

「土砂降りの痛みの中を 傘もささず走ってく いやらしさも汚らしさも むき出しにして走ってく 聖者になんてなれないよ だけど生きてる方がいい だから僕は歌うんだよ 精一杯でかい声で」




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