共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

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zoom RSS 「共に生きる」関係が高校で切断されないよう―12.12埼玉高教組での勉強会レジュメ

<<   作成日時 : 2016/01/11 18:29   >>

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  これも1ヶ月前の勉強会のレポート。
 12月12日(土)、埼玉高教組の分会代表者会議で話したこと。埼玉高教組は、県立高校と県立特別支援学校の教職員の組合。上の写真は、昨年7月に開催した「一緒でいい 一緒がいい」集会で、県立飯能高校定時制で学ぶ障害のある生徒の日常を語る同組合委員長の立野さん。

 12月の勉強会ではパワポを作らず、レジュメを配布(下の画像)して話をした。なお、当日は写真撮影をしてない。
 テーマは「障害者権利条約と『どの子も地域の公立高校へ』、職場参加」。

 実はこの勉強会の翌日に、筆者が事務局長を務めるNPO法人障害者の職場参加をすすめる会の年間最大イベントである「共に働く街を創るつどい2015」を控えていた。だから忙しかったのだが、ひきうけないといけないと思った。そのことを、レジュメの冒頭に書いた。

 今回の話を打診されたとき、「共に生きる」を高校で切断されることをなくしたいから受けようという思いが強く、役不足ではあっても受けることにした。肩書にある「職場参加」とは、雇用の対象からはずされる福祉・医療施設の利用者やひきこもっている人も地域の事業所や行政機関の職場に、アルバイトや下請けや実習などを含むさまざまな方法で参加できるようにしてゆこうという活動。この「職場参加」は「共に学ぶ」の延長にある活動と考えている。

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 以下、レジュメの各章のタイトルを列挙する。

1.「どの子も地域の公立高校へ」の歴史
 
2.高校に入学した後のことは

3.障害者の権利条約をめぐる歴史―せめぎあいの曼荼羅

4.曼荼羅に描かれた世にも不思議な日本の物語

5.文科省の動向
 
6.文科省の調査統計から見えて来ることーその1

7.文科省の調査統計から見えてくることーその2

8.文科省の調査統計から見えてくることーその3
 
9.あらためて「どの子も地域の公立高校へ」

10.高校を卒業した後、または入れなかったり退学した後のこと


 冒頭の「1.どの子も地域の公立高校へ」の歴史というところでは、次のように、「障害者の権利」と「みんな一緒」のせめぎあう2要素として、まとめてある。
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 28年前から取り組んできたが、そのきっかけは1979年の養護学校義務化反対運動を経て地域の小学校で共に学んできた子ども達が中学卒業を迎えたこと。知的障害のある生徒3人が定時制高校の門を叩いた。
 「地域の公立高校へ」とあることから、「「浦高の近所の子だったら浦高全日制に入れろというのか?」という疑問が出されたが、点数による高校ピラミッドがあり、点数があまりとれない子は定時制でも定員内不合格されていた。
 もうひとつは、全盲の浅井一美さんの受験を経て1984年に県教委は身体障害の生徒への受験上の配慮の通知を出していたのに対し、「身体」に限定せず「障害」一般に改めるよう求めた。

この出発点の主張をふりかえると、「どの子も地域の」という部分は「みんな一緒」という意味での「共に学ぶ」であり、後者の「障害」一般への改訂要求は「障害者の権利」(障害の社会モデル)の発想だったと整理しうる。

 「どの子も地域の公立高校へ」は「希望者全入」とも言い換えられる。が、高校の義務教育化や、全員が地域の公立高校に行くべきとか、そのような制度をといった主張は行わない。定員内不合格をなくすことや希望者を全員受けとめられる定員とすべきことを主張している。あるべき社会イメージからの発想ではなく、小・中学校で別学を強いられながら開き直って居続けることで、周りの子が変り、クラスが変り、学校が地域が変った、ささやかかもしれないが、その経験を延長させてゆきたいということがベースにある。このベースは「みんな一緒」であり、「障害者の権利」ではない。


 上記を受け、「2.高校に入学した後のことは」の中には、たとえば以下のようなことが書かれている。
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 重い障害があって言葉を発せない生徒も、小・中学校で他の子ども達と共に学んでくると、他の生徒と同じことを自分流のやり方でやる流儀を身に付けていることが多い。暗喩として表現されている知識や理解を受け取れるのは、まずクラスメートの誰かだろう。その受け渡しをオープンに共有する関係をクラス、学校にひらいてゆくことが必要だ。障害者を受けいれた職場で問われていることと同じである。特定の生徒、同僚に固定したままになっていると、思い込みからいじめ、虐待にもつながりうるが、共有してゆくことで全体の雰囲気が変りうる。


 つぎに「3.障害者の権利条約をめぐる歴史―せめぎあいの曼荼羅」というところで、以下のように書いている。

 障害者の権利条約は、壮大な曼荼羅である。そこには、福祉先進国とみなされた北欧が実は隔離収容社会であったとの反省から生まれた「ノーマライゼーション」、そしてベトナム戦争で障害者となってアメリカに帰国した元兵士らの闘いに始まる「自立生活運動」、同じアメリカで独自に脱施設の活動をひろげた「ピープルファースト」、イギリスの「反精神医学」や「治療共同体」さらに「精神医療サバイバー」、段階的な「ノーマライゼーション」の限界をこえたイタリアの「精神病院閉鎖」と地域に医療や仕事(協同組合)を創ってきた取組などの多くの物語が描き込まれている。

 
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 これは私たち自身が、実際に世界各国の障害者たちと交流を重ねる中で実感していることだが、たとえばインクルージョンといった単一の世界的な運動があるというわけではなく、さまざまにちがった運動がぶつかりあいながらインクルージョンという曼荼羅が生成しているのだ。権利条約の中の「障害」の定義もそう述べられている。そして、「私たちのことを私たち抜きに決めるな」というのは、それら互いに異なる運動の最大公約数。
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 ちがうからこそ、社会を変える力をはらむのだ。私たち自身も、肝に銘じるべきこと。


 そして「4.曼荼羅に描かれた世にも不思議な日本の物語」では以下のように書いた。
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 曼荼羅の端には日本の物語も描かれている。日本では70年代、国際的なつながりはない中で、養護学校義務化を前に「あたりまえに近所の学校へ」という普通学級就学運動と、「抹殺される自らの生きざまをさらす」という青い芝の運動が社会を揺さぶった。また、これらとさまざまな関係をもちながら、施設や家の奥から出て街の中で住まいや介助や労働を創り出してゆこうという実践も重ねられていった。これらが80年代に入り、欧米の運動と交流しつつ、再編成されて行く。これを受けて80〜90代の日本は、自治体段階でさまざまな共に生きる施策ができていった。

 だが、「世界の流れに逆行」といわれることが二つある。特別支援学校と精神科病院だ。日本の国家意志は、分け隔てられた場を増やし守り抜く方向に作用した。
 
 日本政府は来年2月に批准後の実施状況の報告書を国連に提出し障害者権利委員会の審査を受けなければならず条約に反する実態や法制度に不備があれば勧告される。報告書には障害者等が参加する政策委員会の監視の結果を盛り込まねばならない。報告書は政府によるものの他に、NGOがまとめるパラレルレポートがあり、国連は障害者団体などが指摘する実態報告も踏まえて審査に当たる。すんなり通ることはないだろう。

 だからこそ、差別解消法に関する「基本方針」、「職員等対応要領」(義務)、事業者向けの「対応指針」(努力)、「環境整備」、「地域支援協議会」等を整えるのに必死な状況である。この状況を見過ごさず、しっかりと関わってゆく必要がある。

 
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 長くなるので、あとは省き、最後の章に少し触れておくだけにする。
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 職場参加をすすめる会にも、小学校は特殊学級だったが、親が共に学ぶ活動を知り、中学で通常学級に移り、県立高校定時制を卒業したNくんがいる。また、特別支援学校を卒業して生活ホームで一人暮らしをしながら県立高校定時制に入り卒業した電動車椅子ユーザーのMさんがいる。

 だが、多くは中学卒業後町工場に就職し、10数年働いたとか、高校を卒業して転職を繰り返したのち離職が続いているという人が多い。彼らの多くは最近になって手帳を取り、「知的障害者」または「精神障害者」になった。特別支援学校卒業者は少ない。
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 高等部の職場開拓は生徒の家が広域であるため、卒業者がいる職場以外はハローワークや県に頼らざるを得ず、地元の縁をたどって小さな職場に押しこんでゆくかっての中学や家族・知人による職場開拓のような地域力は乏しい。結果として、限られた職場の椅子取りゲームになる。親も、わが子の就労準備性や作業能力、支援の必要度などを、早くから見極め、進路を定めて行かざるを得ない。その結果、養護学校義務化以降、特殊(特別支援)学級、養護(特別支援)学校を合計した就職者の数は減り続け、近年の雇用促進法改正等で少し上向きはしたが、かっての水準には程遠い。

 職場参加の取組は、過去はどうあれ、さまざまな手法を駆使して地域の職場の中に入りこんで行こうというもの。しかし、いったん分けられた状況から地域へ再び参加してゆくには、本人も周りもたいへんなギャップが伴う。そのためにも、共に学ぶ営みを高校でも切らないことが必要だ。


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