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zoom RSS 「発達障害」ってなんだ? Tくんの暮らしと文化

<<   作成日時 : 2013/05/22 00:48   >>

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これは、今年の1月8日夜の写真。月刊わらじ編集作業を終えて。右端は数年ぶりに参加のTくん。実は5月から大晦日まで髪もヒゲも伸ばし放題でひきこもっていた。

 現在もひきこもり継続中で完全に昼夜逆転ではあるが、この朝枕元で声をかけたら参加するというので送迎した。少し早い啓蟄の兆し。

 自分のことを語らせたら聞いてて眠くなるほどくどくどと語れる。その特技を活かしこの夜も原稿用紙に近況報告を執筆開始。

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Tくん39歳。朝10:00すぎにも来てみたが起きる気配なく、いま18:50来たらお父さんが「親が言ってもだめだから直接上がって起こして下さい」と言うので、万年床まで行って声をかけたらやっと起きてきた。

 上は2月下旬の写真。自宅玄関で。この夜も月刊わらじ編集作業。「原稿書くんだろ」と言ったら「はい」。徒歩3分のコンビニより遠くへ出るのは前回の編集作業以来だから3週間ぶり。

 中学卒業後近所の工場で働いたがけがした後行けなくなり、通所施設にも一時行ったがやめる。歩いていても道に何か落としたように感じ下を見るとそのまま数分間からだがそこに停まってしまう。

 一事が万事その調子なので、家でもトイレや風呂に入ると出てこなくなるので家族中から苦情が出て皆が寝てから風呂に入るうちに昼夜逆転。

 からだが停まっている間に思考もそこにとどまり、ぐるぐる廻っているらしい。というのも原稿用紙に向かうとペンは停まることなく走り続ける。

 かなりくどくどしい筆致だが、テーマを与えると何についても自分なりに考えを展開する。おもしろい。

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 上は月刊わらじ2月号に掲載された彼の文章。

 「僕の生活には、ねて夜にびょういんバスでびょういんに足のちりょうしにいくことがおおいです。

  そのあとコンビニエンスストアにいって自分のたべたいおやつをかってバスでかえります。

 足のクスリがきれるとものすごくいたくなっておおごえだしたり トイレにいっておしっこをだしたあとたってると ものすごくいたくなっておおごえだしたり イライラして人のわるぐちが口からでちゃうことがおおいです。

 ようふくきがえてるときも足がいたくなって おおごえがでてでかいこえがでたりわるぐちが口からでちゃうことがおおいです。

 (中略)

 台所にテレビ見てるとき ちくりといたくなったりものすごくいたくなったりしてもがまんをし おやつをたべながらテレビを見てがまんしてみても クスリがきれていたくなったりするけど がまんしてテレビを見てもいたいのはかわらないけど がまんしながらまいにちいたいのをたえてがまんしています。

 いたさのあまりちゃわんをあらったあともはなみずがでて まいにちはなをかむまいにちです。たいへんです。

 (中略)

 足がいたいせいか おなかをこわしたりしてしまうことがおおくてつらいです。

 トイレにはいっているときもあしがばいきんではれあがっていたくて しててもでにくくなったりしてすっきりしないときはつらいです。

 (中略)

 たってごはんをたってたべてるときも 足がいたくなったりしてもがまんをしてごはんをたべたり まいにちにように夜ごはんをたべています。

 (中略)

 ねてるあいだもちくちくと足がいたくなるけど いたいとゆいながらがまんしてねてます。」

 
 なかなかいいと思いませんか。筆者には、現代の万葉集のようにも、梁塵秘抄のようにも感じられるのだが。

 
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 火曜の朝は絵日記の旅に出る橋本克己画伯を駅に送るのだが、その前に写真のTくんの家に寄る。この写真は5月に入ってから撮った。だいぶん髭が伸びてきた。 

 Tくんは時々行動が凍結する。ポイ捨てした吸殻をのぞいた瞬間、服のボタンをかけた瞬間、財布に小銭を入れた瞬間…ストップモーション。ほっておくとしばらくそのままだが、声をかけると動き出す。

 中学卒業後しばらく働いたが、もう20年以上働いていない。昼夜逆転しており、ここ1年近く足の傷が治らず、会えば痛い痛いと訴える。

 夜起きていて朝寝るので、そのまま寝ずに医者へ行こうと、朝立ち寄るようにした。

 初めは寝床まで行っても起きなかったが、ここのところ起きるように。今日も病院に送って行った。
 
 数年前、このTくんが自発的に朝早く起き、情熱的に行動した時期があった。

 わらじの会に関わっていた青年が市議会選挙に出た時のことだ。毎朝、毎夕、駅立ちして声を張りあげていた。市民団体の運営委員会にも熱心に出ていた。

  ああ こんなエネルギーを内に蓄えているんだなと感じられた。蓄電池のような生き方ってあるんだね。

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 Tくんの家は小さな兼業農家。両親と兄弟姉妹で7人の大家族。筆者が7年前この家を初めて訪問したころは、肝っ玉母さんという感じで家をまとめていた母親は、自転車で自爆した後の経過がよくなくて、いまは車イス生活となり、デイサービスに通いヘルパーも入れている。

 その母とTくん以外はみな企業で働いている。職種は用務、清掃、倉庫内作業、事務ほか。

 その合間に、数ヶ所に点在するそう広くない田圃と小さな畑をやる。Tくんはなにも手伝わないが、家族の話と子供時代の記憶とで語る。来週田植えをするのだが、お父さんは会社の旅行でできないので、お兄さんが農業機械を貸し出す越谷の会社の人と 家電製品をいつも買っている小さな店の主人と息子の手を借りて田植えをするそうだ。

 上の写真は納屋に貼ってあった「末田大用水番水日割表」。元荒川の大戸の堰から取水されている末田用水は、Tくんの家の前を流れ、「克己絵日記」の作者・橋本克己画伯の家の近くへ流れてゆ。

 「番水日割表」とは、その貴重な水を各地区の田圃が順繰りに公平に利用するためのスケジュール表。

 いまTくんの家の前の末田用水はフェンスの向こう側を流れているが、かってはフェンスも護岸もない川で、魚がたくさんとれたという。幼かった長男がその流れに落ちて亡くなったという。

 そんな暮らしの歴史はたしかに厳しいのだが、一家がすったもんだしながらもこの環境を受け止めて淡々と暮らしている雰囲気に魅せられて、つい足が向いてしまう。
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 そして、5月も下旬に入った火曜日の11時過ぎ、駅前広場で車を発進させようとしたとたん、大声で名を呼ばれる。見ると50分前に病院まで送り届けてきたはずのTくんではないか?!
 
「忘れ物しちゃったんです」見ると後部シートに布ふくろ。中に財布があるらしい。渡すとバスまで行って、運転席で乗車賃を払っているようす。

 バスが出てゆき、「じゃ、また病院まで送って行くから」と声をかける。さっきまでの素早さはどこへいったのか、いつものようにストップモーションになるのを何度も声をかけながら乗せる。

 「よく間に合ったなあ」

 「病院の玄関で降りたとき、気がついたんですけど、もう車が先のほうに行ってたんで、駅へゆけばこの車で克己くんを送ってくると思って、病院の前からバスに乗ってきました。」

 「もうちょっと遅かったらいなかったな。よく間に合ったよな。」

 「お金持ってなかったんで、バスのお金も払えなかったから、運転手さんに待ってもらってたんです。」

 しかし、バスに戻って財布を開けようとしたら、いつものフリーズが起き、なかなか金をつかみだせなかったので、運転手さんは時間を気にして「もういいよ」と出発してしまったという。それをラッキーと感じている風はなく、やはり淡々と語る。

 ただ、ストップモーション、フリーズというのは外からの見方でしかないのかもしれない。.彼は語り始めると、泉が湧くがごとく語り続ける。先に紹介した文章と基本的に同じ。鎖のようにつながってゆく即興詩人のよう。

 心理学用語でいえば「同一性保持」の現象ないし症状とされるだろうが、むしろ「持続可能な社会」というときの「持続」のほうがぴったりする。
 
 しかも、非常時には敏速な判断と行動が出来ることが本日証明されたのだ。
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 Mくんとは七年前、就労支援センターで出会った。

 かって町工場で働き、怪我してから家にいるようになり、今は昼夜逆転しているが、畑や工場がたくさんある社会だったら勤勉に実直に働くタイプじゃないかなあ。

 この四半世紀に 産業社会の国境線がわずかにずれたことで、彼のように世界からはじき出され「変調」、「乱調」の状況にあるとみられる人が急増している。

 特別支援学級、特別支援学校(特に高等学園)、そして障害者就労支援機関・施設の利用者にもそうした人々が目立っている。

 いろいろなレポートがあるが、たとえば下記の本を参照。筆者は長年特殊(特別支援)教育の教員として働き、県教育委員会や特別支援学校の校長を歴任してきた人。
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 先日紹介した本「精神科セカンドオピニオン」。そこで、、誤診、薬剤性精神病の被害例として報告されている多くも、こうした人々だ。

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そういえば、Tくんの髪と髭 ずいぶん伸びてきた。大晦日からそのままだから。

 



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