共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

アクセスカウンタ

zoom RSS 不利益は?配慮とは? そして 公立高校 希望者全入を!

<<   作成日時 : 2011/02/21 08:53   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

さて、セミナーの二日後は、県立高校前期入試でした。この入試において、二つのあってはならない事件が起こりました。
画像


 一つは、入試直前の説明会で、受検時の配慮について相談していた障害のある生徒と保護者が、高校側から本人の手帳の有無を訊かれ、特別支援学校なら資格も取れるし、就職もしやすいといった話を聞かされたのです。ここは君の来る場所ではないよと言われたようなショックを与えられました。県教委の入学者選抜要項には「障害のある生徒の入学者選抜における学力検査及び選抜に当たっては、障害のあることにより、不利益な取り扱いをすることがないよう十分に留意する。」とあります。この「基本的な考え方」に基づいて「学力検査の際に配慮を要する措置」についての相談をしている最中の発言でした。この発言自体が「不利益な取り扱い」ではないでしょうか。
 
二つ目は、全身性障害と知的障害の生徒にコミュニケーションへの「配慮を要する措置」として、県教委が配置した代筆者が、四択の選択問題で四つの解答記号をすべて記入し、結果として「解答不成立」にしていたという事態が、前期入試の一時間目を終わった時点で発覚しました。両親から「コミュニケーションに個性があるのでしっかり聞いてほしい」、「いずれにも発声したように聞えた場合、複数回聞くと、大きな声で発生したものが本人の選択」という説明が予めあったにもかかわらず、事前に十分な関わりの期間を用意することもなくいきなり意思を読み取ることなど不可能なのに、あてずっぽうで代筆をさせてよしとする高校、県教委の対応は信じられません。ちなみに、近隣都県では、本人・保護者の指定する代筆者の配置を認めています。また、この生徒本人は、中学校時代に、試験を選択問題に直してもらって受けていたので、解答の方式自体は慣れています。

 この二つの事件に直面して、18日、どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会として、県教育局へ緊急抗議と申し入れを行いました。
画像


 対応した高校教育指導課主席の回答は、一つ目の件については、「そういうことのないようにあらためて指導します。」というだけ。意図せざるものとはいえ、なぜ排除的な印象を与える発言が高校現場から出てきたのかについては、わからないと言うのみでした。
 二つ目の件については、「以前に親から本人が答えたことは全部その通り書くべきだと求められたので、その通りにしたのだと思う。」と述べ、「選抜実施要項。選抜要領に基づいて適切に行われたと考える」と、主席は答えました。

 この申し入れの際、自立生活協会の前理事長で脳性まひの八木下氏が発言したときに、主席がよく聞きとれず黙ったままなので、「話していますよ」と促すと、初めて「わからなかったのでもう一度お願いします。」と主席が八木下氏に頼むシーンがありました。一語でもわからない時はすぐにそこで聞き直さない限り、けっきょく主席のように無視するか、自分勝手な解釈で受けとってしまうことになります。時間も制限がある入試で代筆者という責務を果たさせようとするなら、せめて1週間前から本人とつきあうくらいの準備が必要だったのではと問いかけると、主席に
「そんな余裕はありませんよ」と一言で片づけられてしまいました。
画像


 主席は、「みなさんの考える不利益と、私たちが考える不利益はちがうから」と、くりかえし言いました。要するに、教育局、高校が対応しきれないことは、不利益とは言わないということです。
 しかし、そんなことは、さすがに選抜実施要項にも選抜要領にも書かれていません。

 選抜実施要項には、1として、先に引用した「不利益な取扱いをしてはならない」という「基本的な考え方」があり、2として「出願に当たっての配慮事項及び選抜の際の取り扱い」があります。

この2の中に「志願先高等学校長は、特別な配慮を必要とする場合は、高校教育指導課長と協議の上、これを行うことができる。措置については公正さが保たれ、実施可能な範囲内で行うこととする。」と書かれています。コミュニケーションへの配慮ということを考えた場合、近隣都県のように本人とのつきあいに慣れている人を代筆者として認めることが最善ですが、近隣都県では「公正」とみなされている措置を埼玉県では認めていないという問題がまずあります。また、次善の策として、たとえば1週間ぐらいつきあってみるということも、「そんな余裕はない」として、「実施可能な範囲内」と高校長と高校教育指導課長が協議して決めたのが、いまの方式だということになります。

コミュニケーションの障害による不利益とは、近隣都県の対応でわかる通り、一定のつきあいを通さずに意思がないときめつけられたり、意思に反して解釈され対応されたりすることです。その不利益に対して配慮する措置に関し、選抜実施要項では県と高校長が「実施可能」と決めた範囲で行うことになっているだけです。

だから、県と私たちで「実施可能」と考える措置がちがうことはあっても、「不利益の中身がちがう」ということは根拠がありません。近隣都県でも「不利益」と認められていることについて、埼玉県のみが「不利益ではない」とするなら、その根拠を示すべきです。

 選抜実施要項は、「基本的考え方」で「学力検査及び選抜に当たって…不利益な取り扱いをすることがないように」とうたっており、ただ不利益に配慮する措置は「実施可能な範囲」でしか行えないのだから、その差を補うための措置を選抜のための選考に際して行わなければ、基本的考え方に反した「不利益な取り扱い」となってしまいます。
 24日の合否発表で、そのことが明らかになります。

 主席は「要するに入学させろっていうことなんでしょ。でも倍率が出てるんだから、(点数が取れない知的障害の生徒を入学させたりしたら)ほかの生徒が黙っていませんよ。」と言います。
画像


 だからこそいいんじゃないかと、私は思います。できるだけ成績のいい子を集めたいという教員たちの感覚や、高校に行くにはつめこみ勉強しなければという生徒、親、中学の教員たちの追い込まれた意識が、「なんだ、あんな子まで高校行くのか」と、ずっこけたらいいと思います。

 しかし、そう一足飛びに行くわけはありません。障害のある生徒や親のほとんどが、高校行くより特別支援学校高等部のほうが本人のいいところを伸ばしてくれるし、進路の応援もしてくれると思いこまされており、もちろん中学の教員も、世間一般の人もそう信じています。
 そんな孤立の中で、でも普通の中学生たちは、できる子もできない子も、みんな高校は誰もが行くところと思いこまされ、1年、2年、3年と上がるたびに受験ムード一色になってゆくのですから、そこにいる本人も当然その気になってゆくのです。それでも親はやはり悩み続けます。本人にもあきらめさせようかとも思います。
 そんな時、中学の同級生などが、「○○くんも一緒に高校行くんだよね」と声をかけたことが、高校はどうしようと思い悩む本人や親の背中を押してくれたりします。そこに、一緒に高校へ、そして一緒に社会でという思いがつながってくるのです。
画像
 そうやって、障害のある本人や親と一緒に私たちは、まず県教育局や時には高校、中学の教員などと、向き合うことになるのです。

 主席が言う「要するに入学させろっていうことなんでしょ。」という言葉の裏には、「障害が重くなればなるほど、入学できるかできないかは、県としてどれだけ金をかける気になるかであって、現状では点数が取れなければ無理。障害による不利益がどうとか、配慮がどうとか、揚げ足をとるようなことをやっても、意味がないよ」という気持ちがあるのだと思います。

 たしかに入学させてほしい、しかしその前に、立場は違うけれど、一緒に悩み考え合う関係に立ちたいのです。「制度のことは県の私たちにまかせておいてください」というのでなく、現行制度の中で何ができるのか、互いの立場を説明しあって考え、少しでも試みて行きたいのです。これは単なる願望でなく、この20年間、私たちと県教育局で、激論を重ね、試行を重ねて、現在の選抜実施要項・選抜要領の該当部分が作られてきたことを、振り返った上で言葉を発してほしいのです。交渉の最高責任者である主席が毎年必ず交替し、昇進して、4月になると新しい人になってしまうという教育局の積み重ねのなさに、私たちはいつも落胆しています。
ある程度理解してきたと思ったら、もう入試の時期になり、どんどん消極的になり、言い訳ばかりを重ね、拒絶を重ねて去って行く…そういう役回りをこなせばいいと多寡をくくってほしくないのです。
 
さまざまな障害のある人自身も交渉に参加します。18日の緊急行動の時の八木下氏と主席の出会いのように、その交渉の場が、すなわち共に学ぶ上でのノウハウや課題を見出せる場でもあるのです。

画像画像

 

















だから「要するに入学させろってことなんでしょ」だけではないんです。
もうわかってるんだという先入観を捨てて、ちゃんと向き合って、一緒に考えようよということなんです。

 私たちは高校について「希望者全入」と求めてはいますが、高校義務化は求めていません。かって偏差値を廃止した時、埼玉県教育局は、「行ける高校より行きたい高校を」と謳いあげました。しかし、「行きたい高校」を口実に、けっきょく学区の廃止や高校統廃合が進められ、これまでさまざまな困難を抱えた生徒を受け止めてきた高校がなくなり、カリキュラムの自己選択をうたうパレットスクールなどに置き換えられました。

県公立高校の定員は、中学校3年生の在籍数を元に、その全員を私立高校35%、公立高校65%で受け止められるよう設定されています。総枠では、「希望者全入」になっているにもかかわらず、実態はますます競争に拍車をかけ、高校ピラミッドを険しくしているといえます。

県北などでは定員割れも出ている一方、県南、県東などでは高倍率になっています。定員の設定の元になっている中学3年生の在籍数を全県単位だけでなく、地域単位にカウントしてゆくとともに、いまは第3次選考でしか配慮されない通学距離について、第1次選考から配慮するなどの措置が必要です。埼玉の地域の産業の振興や仕事おこし、地域の連帯を考える上でも、その地域の生徒たちが希望すれば地域の公立高校で学べる環境整備が問われているのではないでしょうか。その一人として、障害のある生徒も一緒に学んでいるという状況をきりひらいてゆきたいのです。

 障害のある人々の就労や生活は、地域のさまざまな人々との関係から切り離された場合、一部の人々を除いてはきわめて困難であり、けっきょく特別なサービスや場に集めるしかなくなり、莫大な出費を要する社会のお荷物を増やしてゆくことになります。
画像


2000年の介護保険、2003年の支援費制度、2006年の自立支援法という形で、社会はすでにその坂道を降り始めたのではないでしょうか。もうここらで軌道修正を試みなければ、雪だるま式に事態は悪化するでしょう。
 埼玉の高校の取組は、「どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会」という名称に示される通り、障害のある生徒の高校生活実現を切り口としながら、どの子も地域の公立高校で受け止めて行こうよ、そういう高校にしてゆこうよという取り組みであり、そうした意味での「希望者全入」なのです。

 国レベルの「障害者制度改革」の検討過程では、障害当事者団体の中でも義務教育段階の原則統合について意見が分かれたと言いますが、高校の問題については一切言及されていません。しかし、だからこそ、地域で取り組み、やがて国へも提言してゆくべき大切な課題だと認識しています。

 長くなってしまいました。24日の合否発表の日は、長年切り捨てられ続けている吉井英樹くんが受けた日高高校へ発表を見に行く予定です。遠くから行く者もいるので、現地到着は11時ごろになってしまうかと思います。そして、必要に応じて、連絡会として校長に話を聞きに行く場合もあり得ます。午後、県教育局にも話しに行きます。参加希望者は、山下(090-2421-6569)まで連絡を。
画像

 

                                                 2011年2月18日

埼玉県教育委員会教育長様
埼玉県教育委員会教育委員長様
                           どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会 代表・斎藤尚子
                           埼玉障害者市民ネットワーク 代表・野島久美子




             障害のある受検者も含めた「公平」で「公正」な選抜を



 2011年度の公立高校入試も始まり、16日・17日には前期の学力検査等が実施されたところです。
 今年度も、小中学校で共に学びさらに高校でもみんなと一緒に学びたいと希望する受験生たちを高校現場で受けとめていくよう、県教育局との話し合いを重ねてきました。県は「公平・公正」に選抜すると常に言っていますが、はたして「公平・公正」に行われてきているでしょうか。

 まず、「公平」に行われているかどうかについてですが、
  「障害があることにより不利益な取り扱いをすることのないよう指導する」という県の回答とは裏腹に、この間受験先高校では、不利益そのものと言わざるを得ない対応があり、県の指導のありようが問われるところです。

 ・障害の重い生徒の受け入れに対する理解が進まず、長年不合格とされ続けているため、校長と当連絡会の話し合いを持ったところ、「高校はみんなが行くから行くというところではない」と「能力・適性」について強調していた校長の口から、「コミュニケーションがむずかしいのでみんなと一緒に授業を進めていけない」(コミュニケーションは本人の問題ではなく関わる人との相互の問題であるはずですが)、「中学校の調査書でオール1なので高校の勉強がわかるはずがない」といった発言まで飛び出してきました。
 また、「県からの人的な条件整備についての支援がない」ことも挙げていました。

 ・16日の学力検査では、代筆者(県が決めた人)が本人の意思表示をきちんと読み取ろうとせず、選択問題の選択肢全部を選ぶという事態も起こっています。
 受検当日初めて出会う県が決めた代読・代筆者では意思表示が読み取りにくいことから、本人をよく知っている代読・代筆者にするようお願いしていますが、公平ではないとして、県が決めた人が行なっているのです。

 ・地元の高校を希望して何回も高校説明会に参加し、教員たちの対応もていねいであったのですが、車いすを使用しているため、入試直前の説明会で受検時の配慮について相談をしていたところ、面接者であった教頭が、特別支援学校について話を出してきました。すでに特別支援学校の入学者選抜は終わっているにもかかわらず、です。 それまで、理解のある学校と感じていた親子は精神的にショックを受けてしまいました。

 このような受検に際してだけではなく、障害のある子は別の場でという分離教育のため、普通学級にいれば支援体制がなく一緒に参加できなかったり、特別支援学級・学校にいれば高校受験につながらない学習であったりと、調査書の段階で不利益を受けているのです。

 このような事態にきちんと対応するために、高校に対して、障害による不利益がどのようなことなのか説明し、受け入れていくよう指導することを要望しましたが、「障害のある生徒に配慮して選抜すると障害のない生徒から不公平だと言われる」といった発言までし、一応高校に伝えるとしただけで、時間を理由に話し合いを打ち切ってしまいました。
 これがはたして「公平」と言えるでしょうか。

 また、「公正」についてですが、
 県は中学校に在籍する3年生の数をもとに高校の定員を決めているということで、中学校を卒業した者に高校教育を保障するということが基本にあるわけです。障害のある受検者については「不利益な取り扱いをすることがないように」という通知を出し(現在は選抜実施要項)、定員内不合格を出さないようにという確認もしてきました。
 しかしながら、そのことが守られていません。必要な受験上あるいは選抜の配慮がなされず、定員内不合格も出してきました。これが「公正」と言えるでしょうか。

 神奈川ではきちんと配慮し2・5倍の倍率の中でも障害の重い生徒が合格しています。
 東京では受け入れのための法的な裏付けをして高校現場を指導しています。
 茨城では解答を選択式にするなど必要な配慮をしています。

 障害のある受験生も含めて「公平」に、「公正」に選抜が行われるようにしてください。

  1.2月7日に要望した受験先高校への指導を、県の責任としておこなってください。
      @能力・適性を教育環境との相互作用ととらえられず、本人の力としてしか考えていない校長に対し、コミ           ュニケーションや学力などについて説明してください。
      A障害による不利益がないように」というのは、公平に受けてもらうためということですが、障害による不利           益がどのようなことなのか、それぞれの受験生について具体的に校長に説明してください。
      B中学校で受けてきた不利益について説明してください。
      Cたんに選抜実施要項・選抜要領に沿って説明するだけではなく、障害のある生徒の受験であることか            ら、不利益がないようにという立場で説明してください。
      D障害の状況により、通学距離を考慮して、受け入れるよう指導してください。
      E定員オーバーしても、限界まで希望者を入学許可候補者とするように通知を出すと共に、強く指導して          ください。

  2.県としての支援をしてください。お金がかかるから難しいというのは障害者権利条約で差別とされています。     工夫や相談で解決することもあります。

  3.「埼玉バージョン主席私案」を、再度東京都の例にならって見直し、受け入れのための判断材料として高校に     伝わるものにするよう、さらに検討してください。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
不利益は?配慮とは? そして 公立高校 希望者全入を! 共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる