共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

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zoom RSS 黒い心と白い手 「共に学ぶ」に巻き込まれた私の労働歌

<<   作成日時 : 2011/02/11 19:32   >>

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 9日から10日の午前にかけて、何度も眠りに落ちそうになりながら、校正する余裕もなく、そのままいろんな人に送ったメールを紹介しておく。真夜中でないと、こんな書きぶりはしそうもない。でも、逆に面白いのかもしれず、返信をけっこういただいた。ありがとう。
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 山下です。9日の朝は雪でした。

  雪が降ってきた ほんの少しだけれど
  私の胸の中に 積もりそうな雪だった
  幸せを失くした 黒い心の中に
  冷たく寂しい 白い手が忍び寄る

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 いつも雪が降ってくると、この歌を口ずさんでしまいます。
 この歌は、恋人に贈ったものだそうですから、作者はこの後の「雪が溶けてきた」そして「明るい陽ざし」へつながってゆく流れでイメージをふくらませているのだと思いますが、私にはいつも、この冒頭の、ほろほろと降り始めた雪が黒い心の中にしみこんでゆく情景が、とてもいとおしく感じられるのです。

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ところで、このメールに、13日に予定している「障害者制度改革」埼玉セミナーの案内チラシを添付しました。ぜひご覧になり、当日おいでいただけるとうれしいです。

8日(火)埼玉県公立高校前期募集志願倍率が新聞に出ていました。
全日制は1・49倍で過去最高だそうです。

 また高校入試の季節が来てしまいました。
 猪瀬良太くん、本間亜貴代さん、熊谷富美子さん。三人の知的障害の生徒たちが初めて高校の門を正面から叩いたのが、1988年でした。
 「高校なんてたった3年間のことじゃないか。それより生活や労働の取組を一緒にやったらどうなんだ。」、「本人より、親や教員たちがこだわてるんじゃないの。」そう返しました。
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 わらじの会の在宅障害者の活動である自立に向かってはばたく家準備会では家の奥で暮らしてきた障害者たちの生活が、いよいよ高齢の親たちが倒れ始め、家を出るのか、家に介助を入れるのか、家ぐるみ変われるのか、日々みんなで悩みながら、自立生活演習と称する試行事業をしたり、行政交渉をくりかえしたり、忙しい毎日でした。
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そんな日常から見ると、「みんなと一緒に高校へ行きたいから応援して」という要請は、なんともノーテンキに感じられたものでした。
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それが間もなく、障害者、家族を含めて、高校の運動に巻き込まれてしまったのは、いま思えばほんとうにありえないようなことでした。
このあたりのことは、3月に発行される「季刊福祉労働」春号に「『共に学ぶ』に巻き込まれ続けた30年」というタイトルで書きましたので、発行されたらどうぞお買い求めいただければ幸いです。
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 とにかく1988年に、私たちは、それまでの本人・支援者が中心になって街の中に生活・労働を切り拓いてきた活動を少し見直しながら、「本人はどうあれ、親や教員や周りの人々が、本人と地域で一緒に生きたいという活動」と、ぶつかりあいながらでも、つながってゆこうと、舵を切りなおしたのでした。
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 考えてみれば、「無理して高校行っても3年間しか…」と考えていた私自身の中に、「高校入試ではできない子は落とされるのだから、障害児だけ特別扱いは逆差別」、「進級・卒業だってできない」、「生活や労働の取組とつながらない」といった先入観がいっぱいありました。

 しかし、学校長や教頭クラスが集まっている教育局と交渉を始めてみると、この人たちが「高校は能力・適性のある者が来るところ」という言葉を、お題目のように繰り返すのを聞き、かって車椅子の障害者が一人で駅に行った時の駅員の対応と同じじゃないかと感じました。
 
 言語障害のある人の発言を聞き返すことをせず、黙っている教育局。「答えてください」と言われて、「いまの人がなんと言ったのかわからなかったんで教えてくれますか」と言うような感覚。これはどうしてもつきあってもらうしかないぞと、みな実感しました。
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そういう実感から、そもそも公立高校の目的はなんだろうとか、定員はどのように決められるのか、選抜の基準は何なのか、不登校の生徒や帰国子女への特別選抜とは…などなど、県がしきりに言う「公正」とか「公平」の中身について、県教育局にひとつひとつ確認を求めてきたのでした。
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 本人が地域に出て行く、そして周りが変わって行く、それまで私たちがやってきたことはそういうことでしたが、それだけじゃ狭い、みんながあたりまえに行くところ…学校そして高校…そこにも一緒に出て行って、そこをいろんな人たちがいる場にしない限り、全体としての地域は変わらないことをつかみ始めていました。そして、実際それまでとは比べようもない、さまざまな人々、とりわけ高校生たちとの数多くの出会いもありました。
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 23年間の教育局交渉では、「地域で共に学び・育つことの大切さ」や「障害による不利益があってはならない」、「定員内不合格はあってはならない。あった場合は、本人を受け止める教育環境を整備できなかった高校・教育局の責任として」などの確認を共に行ってきました。そして、トータルでは、かなりの数のさまざまな障害のある生徒たちが、高校で共に学んできました。
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 ただ、これらの確認は、現場の校長・教職員が、厳しい状況だが本人を受け止めてゆこうと考えたときにはその現場を県が支援する裏付けとして生きてくるのですが、現場にその気がなければ役に立ちません。

 先日、どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会の何名かで訪問した高校では、校長が「調査書を見たらオール1だから、授業をほとんど理解してなかったと思う」、「友だちとのコミュニケーションもあまり成り立っていなかったんじゃないか」、「高校は3年間で授業を理解させて卒業させなきゃいけない。時間をかけてコミュニケーションを取る余裕がないんです。」と、頭から受験したって落とすだけだよと言わんばかりの対応でした。一昨年、昨年も受験しているので、この生徒のことは教員一同わかっていますという意味のことも述べていました。
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 23年前とまるで変わらないのですね。まず悩んでほしい、迷ってほしい。コミュニケーションを本人のせいばかりにせず、ほんとに高校へ来たいの、何を勉強したいのと、本人に問いかけてほしい。まずは向き合ってほしいから、高校を受け続けているのです。

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 倍率が高く出たから、定員割れではないから、安心して障害児やできない子を落とせると、安心しないでほしい。
 
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 23年間の積み重ねがあるため、教育局は「教育長の意を体した」事務レベルの各課担当者
が交渉に臨みます。しかし、その担当者を代表する高校教育指導課主席は、毎年必ず異動になってしまいます。したがって、交渉の多くが、これまでの確認を説明する作業になってしまい、ある程度話が通じるようになると入れ替えられてしまうのです。賽ノ河原の石積みのようです。積み上げた途端に崩されてしまうのです。

 でも、これは社会のいたるところで、通じる状況だとも思います。だからこそ、崩されても、崩されても、積み続けることが大切なんでしょう。この歌を労働歌として…。

  雪が降ってきた ほんの少しだけれど
  私の胸の中に 積もりそうな雪だった
  幸せを失くした 黒い心の中に
  冷たく寂しい 白い手が忍び寄る
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 長くなってしまい、またまた午前様になってしまいました。
では、13日の「障害者制度改革」埼玉セミナーへのおこしをお待ちしています。


 ずっと昔、たしか「反差別統一戦線」とかいうような呼びかけがあり、その時はご都合主義くらいにしか感じなかった。でも、いまになってみると、「反差別」に取り組む人に限らず、ごちゃごちゃと一緒にやることの大切さを思う。

 それぞれが地域から排除されているとか、不利益を被っているとか言って、地域への参画を求めている。しかし、その地域が自らの外部にあると考え、自らの内なる地域に他者が侵入することを拒んだままである。他者と一緒に動くことで、自分たち自身の地域が再発見される。

 どこまで受け入れられるのか。どこまで入って行けるのか。それは、心の狭い広いではなく、互いの生活や労働のしかたをどうつきあわせ、折り合いをつけられるのかという、現実的なテーマに他ならない。

 だから、あなたと私だけではすぐ煮詰まってしまうから、できる限りいろんな立場の人たちがそこにいたほうがいい。言いにくいことをはっきり言える関係、それに憤っても考え直すきっかけができる関係が成り立つほうがいい。

 いじわる爺さんも、おせっかいおばさんも、感じたままに叫んでしまう子も、ひねくれ者もいてくれたほうがいい。できることならつきあいたくない人と、しかたなしに一緒にいることから新しい世界がひらかれる。だから、そのような「依存」をしなくてもいいように、「個別支援」を強化し、個として「生きる力」を育てようという文科省・教育委員会の流れも、要注意。

  初めから「反差別」という物差しではかるのでなく、むしろ先入観で分け隔てることがないようにというほうがいい。唯一の基準は、一緒に暮らしたり、働いたりすることであり、そのためのさまざまな試行をしながら、感じたこと、考えたことをぶつけあってゆこうというのがいい。

 「黒い心の中に 冷たく寂しい白い手が忍び寄る」というフレーズを、筆者はそんな風にねじまげて口ずさむ。
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