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zoom RSS 障害者の権利条約 地域からどう照らし返すか

<<   作成日時 : 2010/10/15 09:17   >>

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大企業で働いている障害のある友人・Mさんから、「障害者の権利条約で日本はどう変わるか」というテーマで、原稿を寄せてくれと依頼された。このテーマそのものに疑問をもっているので…と、半分はお断りのような返事を書いたら、心の広いMさんは、その返事をそのまま原稿としてよいかと問い合わせてこられた。そのやりとりを紹介する。(写真は、障害者の職場参加をすすめる会のメンバーが、最近「江戸一」で職場体験をさせていただいた時のようす。障害者メンバーが、商店街等を軒並み飛び込み訪問をした結果、提供された貴重な体験の機会。こうした草の根の日常から、障害者の権利条約をめぐる動きを逆照射してみると…)

Mさん

こんばんは。

コメントを書いてもいいのですが、「条約の批准で日本が変わる」かもしれませんが、直接にはあまり関心はありません。

条約というものは、国際的な経済的・政治的な力関係の表現だと思っています。それは各国の社会の中での経済的・政治的な力関係を背景とした、国際的なせめぎあいによってもたらされます。

これは条約でなく法律の話ですが、有名な話で、アメリカでADAを成立させたブッシュ大統領は、その年(1990年)に冷戦を終結させると同時に、湾岸戦争を起こしました。
障害者たちの闘いを受けてADAを成立させたのは、できる障害者を納税者にすることで、強いアメリカを作るのだと考えてのことだと言われます。

日本の国家中枢を左右する諸勢力が、条約をどのように、かれらの利害関係に役立てようとするか、しないか、まだよくわかりません。いまのところ、明確なのは文科省で、現在の特別支援教育をそのまま「インクルーシブ教育」であると強弁して、何も変えないまま批准へ向かおうとしている状況です。

私が関心あるのは、批准よりも、批准をめぐるプロセスです。批准のためには国内法を見直しし、整備しなければいけないと、民主党政府が「障がい者制度改革推進本部」を設置し、そのエンジンとして障害当事者委員が中心の「推進会議」を発足させたのは、画期的だと考えます。
 ただ、そうは言っても、やはり厚労省サイドが基本の、福祉、障害者雇用、特別支援教育、バリアフリーといった、従来の障害者関連施策といわれる枠組みの見直しの域はこえられないのではないでしょうか。

そういう限定つきではあれ、この推進会議の議論では、きわめて広い分野で、障害をもたらす社会の壁を問い直しており、きわめて示唆に富む内容をはらんでいると考えます。

私自身は、特別な支援を強化して社会に入ってゆくという路線よりも、これ以上分けないでごちゃごちゃと一緒にいる中でぶつかりあいながら学び・働き・暮らすという路線の確立を期待したいところです。
 しかし、推進会議の中でも、そのへんはまだ意見の一致を見にくいようです。
 「ごちゃごちゃ」の路線は、制度的に保障するというよりも、制度抜きで成り行きでそうなってゆくという場合が多いと思うので、「制度改革」という枠組み自体に合ってないともいえそうです。

日本の将来はどうあるべきか、社会が変わらなければいけない点――まさに「条約の批准」とはまったく遠いところを基本にすべきと思っています。個々の家庭、職場、地域で、分け隔てられず共に育ち、共に働き、共に暮らすことを基本にした社会ということです。
 明治維新以来の富国強兵、殖産興業を基本にした日本を、その基本点から変えてゆくべきだと思っています。

第二次大戦後の終身雇用制とか路地裏の生活、小学区制の高校等は、そういう要素を一定程度もっていたと思います。社会環境は大きく変わりましたが、依然受け継がれている部分もあります。
 それを大事にしながら、積極的に個々の家庭、職場、地域レベルでの「共に」を進める施策が必要であり、そのためには自治体のありかたが変わらなくてはなりません。欧米の自治とはまた異なる日本的な自治を創りだしてゆくことが大切だと思います。

 日本社会丸ごと変わることはできないし、ちがうと思います。あちこちの家庭、職場、地域でパイロット的な活動に取り組んでゆくことから始めるべきで、そういうことをつなげて自治体が変わり、企業が変わり、日本が変わるかたちを探ってゆくことだと考えています。

山下 浩志


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(写真は、障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会のようす。障害保健研究情報システムDINFのサイトから転載させていただきました。http://www.dinf.ne.jp/index.html

Mさん

こんばんは。あれでよければかまいません。思っていることをそのまま書いたので、訂正するところはありません。

障害者関係の全国組織では、それぞれ国連まで出かけて、日本政府の施策への是正勧告等を出させようとがんばっている動きもあります。要するに「黒船効果」ですね。日本は外圧に弱いということで…。

たしかにそれが功を奏したケースもなきにしもあらずでしょう。たとえば、宇都宮病院の事件の後の、海外からの調査団訪日など。でもけっきょく外圧で変わるのは、包装紙の部分だけ。
ILO条約なんかもそうですね。子どもの権利条約も。

障害者の権利条約は、要するに北欧の障害者たちが、隔離収容型の福祉の鎖を断ち切り、それをEU全体やアフリカ等に広めていった、そこにアメリカ由来の自立生活運動がからんだ…そういうパワーを契機にしながら、それらを取り込みつつEU各国が大きな経済構造の変化を進めていった、そうした複合作用の結果であると思います。

 ある意味、EUを中心とした国際競争の道具にもなっているわけで、その意味では、EU諸国は、批准にかかわりなく、条約の内実に適合した経済構造に近いものを有しているといえます。

その点は、各国ともにわかっているところだと思います。批准によって、社会が変わるというのではなく、国際的な経済・政治競争で妥協的に部分的・一時的に手を付けざるを得ないことがあるのみだということも。環境問題を見てもはっきりしているでしょう。

でも、いずれにせよ、条約の中身が単なる言葉ではなく、それが日常である社会も現実にあるんだというところから、それを鏡として自分達の日常を照らし返してみるという作業は、大事だと思っています。

山下 浩志


 なお、埼玉で「障がい者制度改革推進会議」の委員である尾上DPI事務局長をお招きして、セミナーを開催した時の報告はこちら。→http://yellow-room.at.webry.info/201003/article_7.html

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