共に学び・働く―「障害」というしがらみを編み直す

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zoom RSS 分けることの深みへ 絶望の底の希望―11.4共に学び・育つための就学相談会に寄せて その2

<<   作成日時 : 2010/10/11 00:59   >>

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前回のその1で、分け隔てられることの意味を考えた。さらに、その根源に降りてゆきたい。今回は本の紹介を兼ねて。まず、ここに紹介するのは、阿部謹也著「中世賎民の宇宙―ヨーロッパ原点への旅」(筑摩書房)。この「旅」というサブタイトルがよい。時代状況はまったく異なるが、現代に受け継がれている「賎視」の根源について、考察している。

 「中世の人間は均質的な時空観念のなかで生きていたわけではなかった。彼らは二つの宇宙の中で生きていたのである。わかり易くいってしまえば、自然界の諸力を人間が辛うじて制御しうると考えられていた範囲内が小宇宙(Mikrokosmos)であり、その外側に人間にはとうてい制御しえない諸霊や巨人、小人、死などの支配する大宇宙(Makrokosmos)が広がっていた。」(同書P196)

 「山火事、鬼火などの形で野生の火は人びとを脅かした。…山火事や鬼火は大宇宙の出来事として、人間には全く制御しえない現象とみなされていた。…野外の火を扱う仕事は大宇宙と直接かかわることであり、それなりの作法と手続きが必要なのであり、それを扱う仕事は特殊な能力を必要としたのである。煙突掃除人は各地で賎民に数えられている。」(同書P201)

 「中世人にとって大地、土は不可思議なる霊力に満ちたものであった。魔女を吊るすときに、高く吊し、地面に足が触れないようにしたのも、大地に触れることによって魔力を回復すると考えられていたからである。大地そのものが大宇宙の要素だったのである。1731年の帝国法令によると、道路清掃人と川掃除人は賎民に数えられている。」(同書P.204)

 「明治以来の西欧化=近代化のなかで西欧文明を輸入し、アジアのなかでも先進的な近代国家になったわが国では、政治制度や都市環境、司法・行政制度、企業の構造、学校教育制度などのさまざまな分野で近代化、西欧化が進められた。背広を着て、グレゴリオ暦で暦を計算し、小学校においてヨーロッパの民謡を習い、西欧で発明されたさまざまな近代文明の産物を享受するだけでなく、私たちはそれをより大規模に発展させ、ある面ではヨーロッパをはるかに凌駕する段階にまで到っている。
 ところが日本の政治・経済・法律のどの面でも現実に動かしてゆく際には西欧的なシステムではなく、伝統的な人間関係が要となっているのである。大学のように全面的に西欧から輸入した制度においても、例えば選挙などの際にあらかじめ根回しが行われるし、経済界での談合もある面では常識とすらなっているようにみえる。」(同書P6.)

 「いわば西欧文明の輸入を通して、この百年の間に私たちが身につけてきた公的な制度の奥底に、伝統的な日本人の人間関係の世界があり、それが近代的で合理的な諸制度を支えているのである。」(同書P7)


 
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ここで語られている内容は、わらじの会30周年を記念して出版した「地域と障害―しがらみを編み直す」で述べたことと、重なってくる。

 スウェーデンが60.年代まで隔離収容型福祉を先頭になって進めてきたのは、家族の中での個々の成員の自立をめざすひとつのかたちだった。第二次大戦前には、障害児は森に捨てられたとも聞いた。そして、アメリカの大規模収容施設の惨状の反省の上に、ノーマライゼーションが提唱され、分けられた社会から共に生きる社会への転換が精力的に進められたが、人々はあくまでも十分な支援を尺度として、それが得られる限りにおいて地域への統合を選んでいった。私たちが訪問した80年には、普通学級の障害児は身体障害児だけで、知的障害児は地域の学校に統合された養護学校(分校)にいた。

 知的に重い障害児や介助を必要とする障害児が、介助員なしで教職員やクラスメートの手を借りながら普通学級に一緒にいる日本の私たちは、この点においてだけはスウェーデンの状況に疑問を抱いたものだった。

 養護学校義務化が実施されたのは79年。私たちのスウェーデン訪問の前年。それまで、わらじの会の代表・野沢啓祐をはじめ、かなりの重度障害児は地域の普通学級に通い、さらに障害が重くなった時点で就学免除になるというパターンが多かった。乳母車で授業を受けた障害者もいた。知的な障害の場合は、普通学級か、特殊学級にいた。養護学校に行くのは、裕福な家の子どもだという時代があった。

 養護学校義務化以降、就学猶予・免除の子どもだけでなく、地域の学校にいた子が、どんどん養護学校に収容されてゆく。通学バスでの往復で、地域からその子たちの存在が消されてゆく。さながら神隠しにあったように。

 地域や家庭の解体が進んでいるが、そうした解体の中でも、阿部謹也氏が指摘する人間関係が貫かれている。なかでも地域の学校は、近隣の同世代のほとんどの子どもたちが一緒に生活する唯一の場であり、子どもを通して親たちが顔と顔をつきあわせる場でもある。
 「子はかすがい」というが、少子化の今、その意味はさらに重くなっており、学校は家族と家族の関係の場ともいえる。あらためて自己紹介をし合わなくとも、家庭の内情を含めて、地域の住民同士の生活や労働の状況が共有される。とくに母親たちの地域情報は、量質とも驚異的である。

 これを裏返せば、地域の学校はいわば小宇宙に位置し、その外は大宇宙、異界としてみなされることを意味する。先に「神隠し」と表現したが、養護学校は神や魔獣の世界になる。小宇宙は大宇宙と明確な境界を作ることで、自己を保持する。その現世と他界をつなぐための儀礼が、福祉教育と交流教育ということになる。

 
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どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会の活動などで、よく助言をいただいた篠原睦冶さん(和光大学名誉教授)の新著「関係の原像を描く―『障害』元学生との対話を重ねて」(現代書館)の中(写真)に、こうして、いわば世界を、あるいは宇宙を分けてきた側が分けられた側にどのように出会っているかについて触れた部分がある。
 瀬川三枝子さんという神奈川県の職員で、婦人相談所、児童相談所、精神保健福祉センターで働いてきた視覚障害者からの鋭い批判。

 「昔は声をかけてくれる人は少なかったけど、かけてくれる人は、さすがにかけてくれるだけあって勇気を持ってやっているから責任感があった。だから途中でほっぽり出すことはない。今の人は『声をかけましょう』と言われて育っているから、『障害』者とみれば、いつでも声をかける。声をかけてくる若い人の中には、福祉教育を受けてるなってわかる人がいる。あそこに白杖をついて歩いてる女の人がいるからじゃなくて、『障害者』がいるから声をかけるみたいな感じでね。黙って人の手首をつかんだり、男だろうが女だろうが、私の腰に手を回す人もいる。性別も年齢も関係なく、ひとを『障害者』という物体のように扱ってくることに腹が立つ。」(同書P105)

 でもこのように分けられてゆく時代だからこそ、一緒にいることのインパクトは大きいともいえる。

 
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 わらじの会のメンバーで、小・中学校は普通学級で過ごし、高校は落ちて、地元の通信制高校に行った脳性まひ者・樋上秀(写真・「地域と障害…」の執筆者の一人)は、小学校4年生ごろからいじめを受けた。登校拒否し、中学校には3分の1ぐらいしか行っていない。それでも時には通学路の途中まで行き、ツッパリ連中と言葉を交わしたりした。30代になった頃、かっていじめたクラスメートと再会し、相手の家で一晩語り合い、わらじ大バザーの前夜の泊まり込みにも誘ってしゃべった。めんどうを見てくれた優等生より、いじめやけんかの相手が、懐かしい。向こうもそうらしい。
 通信制高校では、野球部のコーチをやり、泣いたり笑ったりした。そのチームメイトが、独身の会社員時代も、家庭をもったいまでも、息抜きがてら、ひきこもり気味の樋上のアパートの片付けや洗濯に、月一回やってくる。
 樋上は、言う。「学校が嫌いだ。でも学校が好きだ。」

 分け隔てる流れが大きくなるに従って、そのぶん、ただ共にいるだけの重さが増している。
共に学び・育つための就学相談会

先輩の親や大人になった障害のある本人・関係者がご相談に応じます

11月4日(木)10:00〜14:00  (各自昼食をご持参ください)
             
越谷市中央市民会館5階第2会議室 〒343−0813 埼玉県越谷市越ケ谷四丁目1番1号  048−966−6622 

受付9:30〜 開会10:00
10:00〜11:00 資料説明、体験報告
11:00〜12:00 グループ相談会
12:00〜13:00 昼食しながらフリーに
13:00〜14:00 個別相談

資料代:500円

わらじの会・どの子も地域の学校へ!公立高校へ!東部地区懇談会(TOKO)〒344−0021埼玉県春日部市大場690−3谷中耳鼻科・黄色い部屋内 
waraji@muf.biglobe.ne.jp
http://members.at.infoseek.co.jp/TOKOnews/                 

参加希望の方は11月1日(月)までに下記へご連絡下さい。家族・本人以外の方の参加も可。保育のご希望も連絡を。
白倉048‐752-7351(TEL&FAX)  中山 090-2202-5271   山下 048-737-1489(FAXは048‐736‐7192)








 




 

 

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